皆さんにひとつ、おすすめしたいことがあります。
それが何かといえば、「観便」。読んで字のごとく「便を観る」。
「みる」は「観る」。ちょっと見じゃいかんのです。
じーっと観察しなきゃならんのです。
日本は戦後、西洋のライフスタイルを急速に取り込んだことで、ライフスタイルが大きく変わりました。中でも最も変わったのが便所。
かつてその昔、便所は「ご不浄」と呼ばれ、あまり好ましくないものとして日当たりの悪い北側や屋外に設けるなど、鼻つまみものとして扱われてきました。ましてや排泄物である大便は「糞」とか「糞便」など口にすることさえはばかられるような恥ずかしい嫌われものとして蔑まれてきました。
しかし、西洋化が進んだ現在、「ご不浄」は「トイレ」と呼ばれ、汲み取りが水洗式にとって代わり、「糞」は幼児たちによって「うんち」と呼ばれ、からかわれながらも以前よりはちょっとはマシな地位を獲得しつつあります。
今こそ声を大にして申しましょう。「大便は単なる排泄物ではありません!私たちの健康状態を教えてくれる大切な教師です!これからは大便先生と呼んで一緒に崇め讃えましょう!!」
・・・失礼しました。(汗)
西洋式便器が主流になった今だからこそ正確にできる「観便」。それをせずにみすみす便を水に流してしまうような愚かを繰り返してはなりません。せっかくの健康チェックのチャンスを見逃していることになります。では、観便を行う際のちょっとしたポイントについてお伝えしましよう。
⭕️バナナのような便
何事にも理想形というものが存在します。大便について言えば、「スッキリ出てきた太めのバナナ数本」というのが理想形。紙でお尻を拭いても便がつかないくらいのキレの良いのが最上です。
健康状態が良く、消化、吸収、排泄の仕組みが乱れることなく順調だった場合、便はこのような状態でこの世に誕生します。
⭕️栗のような便
便秘気味の人であれば、便は硬く栗みたいなカタチをしていたりします。排便時にも苦しい思いをする便です。また、強く息むため、肛門が切れて切れ痔になりやすいタイプでもあります。食物せんいや水分が不足するとこうなります。改善するには、水分を多めに摂ること、きのこや海草、こんにゃく、発酵食品を意識して摂ることです。
⭕️ウサギのフンのような便
ウサギのフンのように小さくてポロポロした便は、腸の働きが不安定な状態を表します。ストレスが原因かもしれません。また、腸管が何かの原因で狭くなっていることも考えられますから、上記の栗便でお伝えしたような食品を積極的に摂ることをおすすめします。
⭕️ペースト状の便
ゆるい便は排便時には楽に排便できます。これは何度拭いても紙についてしまうような便。流す時に便器の中に便が拡がるようなゆるい便です。脂肪分や糖分の多い食品を食べ過ぎていませんか?これらが続くと消化に悪いのです。葛を使ったお料理を意識して食べると、柔らかい便を正常化する助けとなります。
⭕️水のような便
カタチの次に注意すべきは「色」の問題。
腸内環境は、腸に生息する善玉菌や悪玉菌などのバランスによって大きく影響されます。 便の色は腸内が酸性、アルカリ性どちらかに傾くことによって変化し、腸内が善玉菌優勢の弱酸性の状態では、便の色は黄色に近い色となります。逆に悪玉菌の多い状態では、腸内に腐敗物質が作られアルカリ性に傾き、便の色はどんどん黒ずんでいきます。まとめてみれば次の通り。
⭕️黄金色
色で言えば、理想の便は黄金色。明るく黄色っぽい色です。腸内に善玉菌が多く、弱酸性の状態に保たれている健康なお腹の証なのです。
⭕️白っぽい黄色
黄色は良しとして、白っぽい黄色は健康な便ではありません。白っぽくて下痢のようにゆるい便は、ウイルス感染の可能性があります。下痢便ではなく、正常な形状で白っぽい黄色は、脂肪分の多い食事を取り過ぎて消化不良を起こしているかも。
⭕️白い色
米のとぎ汁みたいな白い下痢便の場合、ロタウイルス感染が考えられます。感染症が治れば元に戻りますから心配ありません。白い便が出る感染症にはコレラがありますが、日本国内で自然発生するケースはほとんどありません。地域への渡航暦がある方はちょっと注意して。
また、胃腸薬などに含まれるアルミニウム塩や珪酸によってウンチが白色になることがありますが、薬の服用をやめると色は元に戻ります。
⭕️緑色
便の色は、胆汁に含まれるビリルビンという成分の影響で黄色っぽい茶褐色になります。 しかし、このビリルビンが酸化すると便は緑色になります。赤ちゃんに起こりやすいのですがそれは心配いりません。
大人でも腸の働きが鈍くなって胆汁が大腸で再吸収されないと酸化が進み、便が緑色になることがあります。暴飲暴食、刺激の強い食べ物の食べ過ぎなどで腸が炎症を起こしても、胆汁が吸収されにくくなって酸化し、緑便になります。
⭕️黒い色
便は腸内に長く留まると黒に近い褐色になります。便が黒いのは、大腸内の悪玉菌が増殖し、腐敗物質を出すためです。便秘の人が久しぶりに排便しても黒い場合がありますが、原因は悪玉菌が出す腐敗物質によるものなので大きな心配はありません。しかし、腸内で発生した腐敗物質は肌荒れ、吹き出物、肩こり、頭痛、体が重いなど体調不良の原因にもなるため、理想の黄金色になるように、食生活や運動習慣の改善に努力しましょう。
まっ黒な便はカラダの危険信号。その色から「タール便」とも呼ばれます。血液は酸と接触すると黒ずんできます。つまりは、黒色便は食道や胃、十二指腸などの消化管からの出血が疑われます。必ず専門医の診断を受けましょう。
⭕️赤い色
赤い色は血液の色。血液は時間が経つと黒ずんできます。便に混じる赤も同じこと。赤い血液が混じっている場合、肛門に近い場所から出血している=痔と考えられます。反対に、黒い便が出る場合は肛門から遠い臓器での出血が考えられます。
硬い便を無理に出した場合など、肛門から出血したり、いきむことで肛門がうっ血し、いぼ痔になることもあります。赤黒い便の場合は、大腸の病気による出血かもしれません。水便は食中毒や赤痢、潰瘍性大腸炎、また、軟便の場合は大腸ガンが疑われることがあります。血便が出たら、まず専門医の診断をおすすめします。
・・・以上が大まかな便の観察の仕方ですが、このほかに「臭い」も観察対象となります。便の臭いの素となるのは、インドールやスカトールというタンパク質成分が腸内細菌などにより分解されたものです。それゆえ、タンパク質を多く含む食品を食べる人の便は腐敗が進み、臭くなります。肉を食べ過ぎると臭くなるのはそのせいです。
食生活の洋風化にともない、高タンパク、高脂肪の食品を多く摂るようにになってきた今の日本人は、昔の人たちに比べ便の臭いも強烈になってきたはず。それを改善しようと思えば、野菜や穀物の割合を多くすることです。犬猫の便の臭いは耐えられないけれど、ウサギやヤギの便がさほど悪臭でないのも同じ理由から。
便はあなたが食べたものや、その老廃物がカラダを通過した記録であり、あなたの足跡であり、あなた自身です。毎朝、鏡の前で顔を眺めるようにあなたの便を観察してみて下さい。
そこには、誰に気づかれるわけでもなく、褒められるわけでもなく、愚直なまでにあなたに健康になってほしい一念で無言のメッセージを送り続けていた大便先生の存在があるでしょう。
そして、あなたも私同様、その偉大なお働きに対する感謝のあまり、先生を奉らずにはいられなくなるはずですから。
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