マクロビオティックスにおける食べる時の5つの心得

マクロビオティック

 

この世に存在するどんな宗教も思想活動も、それを行うのが人間である以上、日々の暮らしの中で人が食べ物を食し、それを排泄して生命を維持するという原則は変わりません。マクロビオティックスでは、物質的、精神的環境を含むあらゆる環境の本質に「食物」があると捉え、それらのエネルギー的な側面をも含めて取り扱います。

それゆえ何か厳しい教義のように感じられる方もあるかもしれませんが、そのさじ加減は本人次第。食物の持つ陰的側面と陽的側面を学び、理解した上で、なりたい自分になるための食事を自由に選んで行けば良いのです。言い換えれば、より自由に生きるために食事の原則を活用する、それが本来の、マクロビオティックスの目的なのです。




 

 

■心得その1・食べ物を疎かにしない■

 …とはいうものの、食べる上での「精神的心得」というのはあります。簡単に言えば、「こんな気持ちで日々の食事に臨んでください」というようなものです。

マクロビオティクスの世界的リーダー・久司道夫先生は生前、次のように指導されていました。

食べる時には、穀物の一粒一粒、野菜の一片一片を魂のこもったものとして考え、その選択、調理、食事のどの過程においても食べ物を疎かにしないこと。

豊かになった戦後日本において、年々増え続けているのが食品廃棄物です。政府広報によれば、その量、平成28年度推計で何と年間2,759万トン。しかも、食べられるのに捨てられる食品の量は年間643万トン。これを日本人1人当たりに換算すると、1人年間約51kgの食糧を捨てていることになります。もちろん食品廃棄量世界一。

食糧の多くを外国からの輸入に頼っていながら大量に捨てているわけで、何と不名誉な称号でしょう。大量の食品廃棄物が発生することにより、ゴミ処理にも多額のコストがかかります。さらには、ゴミとして燃やすことで、CO2排出や焼却後の灰の埋め立て等による環境負荷も大きいです。しかも、多くの食品廃棄物を生み出す一方で、7人に1人の子どもが貧困で食事に困っている状況です。

食べ物を単にモノとして捉える感性がこうした状況を助長していることは否めません。久司先生が教えて下さった心得にはきっとそうした問題提起も含まれています。

 

■心得その2・感謝の気持ちを捧げる

無限の宇宙から生まれた食べ物に対し、心からの感謝を食前食後に捧げること。私たちの存在を可能にしてくれた自然、宇宙、社会に永遠の感謝を捧げよう。さらには、栽培、輸送、加工を経て、料理、給士に至るまで食事のために働いてくれた全ての人々に深い感謝を捧げよう。

当たり前のことですが、私たちが食物を口に運ぶまでにはそれに携る多くの人々の存在があります。また、農産物や海産物、畜産物を生み出す環境を提供してくれた大自然があります。

例えば、一皿のカレーライスを食べるとして一体何人の人間が関わっているでしょう?

まず、ご飯の原料であるお米は肥料を使って栽培されます。そのうち窒素肥料の多くは石油から作られるわけで、それに関わる石油工場の採掘、輸送、精製の工程には何千人もの規模の人々が関わっていますし、他の肥料であれば化学工場に従事する人々、それらを調合する国内肥料メーカーに従事する人々、販売店の人々、その肥料を使って実際に栽培する農家の人々、そのお米を販売するスーパーに従事する人々、その他に肉、野菜、スパイスなどの食材にもそれぞれ同様の工程に関わる人々がいて、最終的に全ての食材を使って調理する人がいて、初めて私たちの目の前にカレーライスは現れます。

そう考えると、関わっている人の数は直接的、間接的な関わりを含めれば、軽く1万人は越えてしまうのではないでしょうか?一皿のカレーライスはまるで無数の縁が繋いだ奇跡のようにも思われます。そんな気持ちでいただくと自然と深い感謝の気持ちが湧いてくるのではないでしょうか。

 

■心得その3・食を自分の血肉にする

●食事中は、自分がその食事に値する者であるかどうかを反省し、食べ物から生ずる精神的・肉体的な活動を、社会や他の人々、さらには自然や宇宙の調和のために使えるように意識し、食べ物が自分の血肉になるよう良く噛んでいただこう。

これは、インプットとアウトプットを意識せよということです。食べ物はすべからく私たちの肉体のみならず、精神活動や、行動を支えるエネルギーとなります。食べることにより出来上がった自分が、食べ物を生み出してくれた環境に対して、周囲のお世話になっている人々に対してどのように恩返しできるかを意識せよということだと思います。

そして、思った通りの行動ができるようにするには、食物を十分自分の血肉にしなければなりません。そのためにはよく噛んで食べることが基本です。その効用は計り知れません。胃腸の働きを助けて消化を良くしますし、唾液の分泌が増えることで抗菌作用が高まり、虫歯ができにくくなります。噛むと満腹感が得られるために過食せず肥満の予防になります。おまけに脳の血流が増し老化も防ぎます。どれもいいことずくめな上、結果、心身ともに元気で健康になり、理想が実現しやすくなります。



■心得その4・全てを家族と考える

食事を終える時には、友人や家族とともにいただいた食べ物が、自分の血液となり、肉体となり、思考となることをよく認識して、意識を世界に生きる全ての人々へと広げ、全ての人を地球と宇宙における一家族として考えられるようにしよう。

世界中に数多ある食事法で、ここまで宇宙的な心得を示しているものはないのではないか、そう思います。マクロビオティックスの「マクロ」には「大きな」という意味がありますが、まさに食べる行為を通じて意識を大きなものへと向けることの大切さを久司先生は私に教えてくださいました。

地球上の全ての存在を自分の同胞、家族と捉えられたなら、この世から戦争はなくなり、他の生き物を無駄に殺傷することもなくなると思います。マクロビオティックスは、厳密には一般的なベジタリアンとも若干ニュアンスが異なるのですが、ゴールとしてのあらゆる生命に対する平和と調和を目指す意味においては、共通の、あるいはそれ以上の目的を内包しているものと感じます。

 

■心得その5・食べ物を残さない■

食事に出されたものは全て残さずに食べよう。食後は自分で食器を洗い、それで気持ち良く食事ができたことに沈黙の感謝を捧げ、美しく整頓しておこう。

冒頭部分で述べた食品廃棄物とも重なりますが、いただいたものを残さないのは食べ物に対する礼儀でもあります。もしも食べる前に、残ることが予想されるようであれば、まず余分に取りすぎないことが大切です。その分、他者に分けてあげるのです。日本の食前の挨拶「いただきます」には、かつては生きていたであろう食物の生命をいただきますという意味が込められています。

言葉には思いがあり、思想があります。先人たちは、きっと食べる私たちと食べられるものとの関係を、生命のやりとりとしてしっかり意識していたに違いません。マクロビオティックスの学びを深めることで、この国に生きた先祖たちの思いの深さに改めて感動します。

久司先生が教えて下さった食の心得こそ、私たち現代人がとうの昔に忘れてしまった、そして、今一番に必要な、人間が真に人間らしく生きるための心得そのものであるとも思うのです。

 

 

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