2023-08-21

宇宙意識

原爆と宇宙人①

『はだしのゲン』と私 広島の原爆ドーム、そこは子どもの頃からずっと訪れてみたい場所の一つでした。広島と聞いてまず頭に浮かぶのは、漫画『はだしのゲン』。小学5年生の頃、漫画家になりたかった私は学級図書にあったこの作品と出会い、魂を激しく揺すぶられました。 作者の中沢啓治先生は、確かな画力と豊かな想像力で、原爆がもたらした惨禍と人々の深い悲しみを見事に表現されました。被爆者の苦しみと、戦争の悲惨さ、そしてどんな困難にも負けず逞しく生き抜こうとするゲンの健気さが伝わってきて、教室の片隅で何度も涙を拭いながらページを捲った少年の頃の自分を思い出します。 以来、テレビや新聞で原爆ドームの画像を見る度に胸が締め付けられるように感じ、いつかこの場所へお参りに伺いたいと思っていたのですが、今年その思いが叶いました。78年前のあの夏も、このように暑かったに違いないと思われる強烈な炎天下の中、その建物はありました。 目の前の実物が醸し出す空気 チェコの建築家ヤン・レツルの設計により建造され、市民に親しまれてきたこの建物。 原子爆弾はこの上空600mでさく裂したため、建物は一瞬のうちに大破・全焼し、館内にいた全員が即死しました。 実際に見るからこそ感じられる重い空気があり、胸がキリキリと締め付けられました。崩れ落ちた瓦礫の痕跡、建物の倒壊を防ぐために加えられた鉄筋の支柱、そして焼け焦げて枠だけが残った無残な天蓋の姿が当時の惨劇を伝えます。この物言わぬ建物が、原子爆弾がもたらすものとは何か?という問いを自らの姿をもって体現し、その静かな佇まいで訪れる者たちに訴えかけます。私もここに立ちながら、もしもあの日あの瞬間、自分がこの場所に存在していたとしたなら…と想像すると、大変悲しく、また恐ろしくなりました。