ニセモノのマスター

人の好みほど多様なものはない。飲み屋のカウンターで飲んでると、「何かおすすめはありますか？」という質問をする客がいるが、難しい。

「おすすめは？」という質問に対して一般的に美味しいと評判の焼酎を伝えるなら容易い。しかし重要なのはその客にとって美味しい焼酎なのだ。

客が「マスターが好きな焼酎を教えてよ」と言っても、言葉を真に受けて自分の好みを紹介するようでは真のマスターではない。「マスターが好きな焼酎」の意味は、「ボクが気にいるような焼酎」なのだ。

自分が好きなものを話すのは子供でもできるが、相手が興味を持つものになると、好みや考えが分からなければならないから、何らかの質問をして情報を集めるのが正解。だから「最近お好きなのは何ですか？」と、逆に質問をする位のマスターであれば合格だ。

昔よく行った飲み屋で「おすすめありますか？」という客の質問に、マスターは客の好みを探りもせず、待ってましたとばかりに自分の好きな焼酎について語り出した。

次から店を変えたのは言うまでもない。

⭐️ 酒を美味しくするのは、品質ももちろんではあるが、それを提供する店のマスターの品格がものを言う。では、そのマスターの品格が合格点に達しないとしたならば、どうすれば良いか？酒の品質を追求すれば良い。目下、すごく気になる芋焼酎がある。有機栽培原料であるのはもちろん、古式製法にこだわる逸品。来年のお正月用にこれを調達すべきか、今、思案している。