異形の世界に遊ぶ
異形の者達がこの上なく好きだ。異形とは通常からかけ離れた異様な姿をした存在。妖怪や怪物がそれにあたる。
先日、書斎の本棚に並ぶ川上弘美の『龍宮』が目に留まり、手に取り数ページ読んだところたちまち物語世界に引き込まれ一日で読了した。
人間になった蛸が女を抱いた自慢をしながら主人公に酒を奢らせる話、90歳過ぎの狐と思しき老人のデイサービスに通う介護士が老人に恋して家に居ついてしまう話などが収められた短編集。
子供の頃、ゲゲゲの鬼太郎が大好きだった私が今でも異形の者に救われる。
社会は有形無形の縛りに溢れている。そこに疑問と欺瞞を感じ、時々破壊したくなる。でも現実には守るべきものが多過ぎてできない。
しかし、物語を通じて異形の者達は私を空想の世界に誘い、魂はひと時の自由を手に入れ異界に遊ぶ。あぁ、読了後のカタルシス。
考えようによっては現実世界のほうが異界よりもずっと生き辛い。
⭐️ 現代日本の文壇において忘れてならない書き手の一人である川上弘美。彼女の選んだ本だからこそハズレはない。特に印象に残った書評は埴谷雄高の『死霊』。私も読んだし持っている。やはり川上の書評にもハズレはなかった!
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