ヤバい動画にはファクトチェックを！

先日、イギリスのエリザベス女王死去のニュースが世界を駆け巡ったが、それに呼応するように、女王が生前、アフリカの子ども達に食べ物を投げ与えている動画が、日本を含む世界でまことしやかに拡散された。まるで家畜にエサを与えるようなその映像。確かに陰謀論界隈ではイギリス王室の恐るべき秘密が取り沙汰されており、私もその動画を見てさもありなん！と一瞬信じそうになった。

ところがこうした動画こそ要注意だ。その後、ファクトチェックを活動目的とするサイトで確認したところ、動画の女性は女王ではない事が明らかになった。

同じ映像をGoogleの画像検索で調べると、映画の基礎を築いたことで知られるフランスのリュミエール兄弟がつくった会社の作品と一致する。タイトルから推測するに小銭を拾うベトナムの子ども達を撮った映像のようだ。映像の女性2人はフランス人で、エリザベス女王ではない。撮影場所も当時はフランス領だったベトナム北中部であり、アフリカではない。しかもこれは女王が生まれる前に撮影された映像であり、完全に誤った情報である。

ファクトチェックセンターさん、ありがとう。メディアリテラシーが取り沙汰される昨今、こうしたチェック機構を持つ信頼のおけるサイトの登場を待っていた。情報はどんなものでも吟味して慎重に扱いたい。

＊日本ファクトチェックセンター https://factcheckcenter.jp/

配信されていた若き日のエリザベス女王がアフリカの子供達に食べ物を与えているとされた動画

⭐️ もちろんファクトチェックがフェイクニュースを根絶するための特効薬にはなりえない。しかし、多くの人がファクトチェックを意識するようになることで、ネット情報が事実かどうかをより吟味するようになる。ネット社会においては互いに騙されない騙さないフェアな関係で情報をやり取りしたい。それが情報社会の成熟を促す。