小野小町の九相図
死ぬまでに一度訪ねてみたい寺がある。京都の安楽寺だ。そこには「小野小町の九相図」なる絵が所蔵されている。これが何かというと、絶世の美女・小野小町が亡くなってから荼毘に付されるまでの9段階を絵で描写したものだ。
仏僧たちの煩悩を絶つ為に描かれたらしい。しかし、仏僧のみならず全ての人間はいつか必ず死する。この世の中で変化しないものは何一つない。そんな諸行無常の思想を民衆に伝える役目を担った図でもあったのだろう。
すでに印刷物やネット画像でこれらの絵は見た事はあるのだが、屍と化した肉体が腐敗していく様子が正確に描かれているのに驚いた。
当時、間違いなく絵師は実際の人間の死体の腐敗する過程を冷静に観察していた事が見て取れる。こうした絵は鎌倉時代から江戸時代にかけて描かれたそうで、戦乱の世に伴い、死が身近にあったゆえモチーフにされたのだろう。
そう考えると令和時代の今は、死が隠蔽されていて嘘くさく感じる。いつか九相図とリアルに対峙して死について考えてみたい。
*ちなみにトップ画は河鍋暁斎作・『髑髏と蜥蜴』。
⭐️ 人はなぜ、己の人生に何かを記そうとして止まないのか?それは己の肉体がいつか朽ち果ててしまうものであるからに他ならない。それゆえ人は永遠に憧れ、生の痕跡を残したいと欲するのだろう。人は死んでも芸術は死なず。きっと、その痕跡のことを「アート」と呼ぶのだろうな。
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