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秋刀魚の味

秋刀魚の味

秋になると無性に観たくなる映画がある。日本を代表する監督小津安二郎の遺作『秋刀魚の味』だ。私が生まれる前に撮られた古い作品でありながら毎回観る度に新しい感動を与えてくれる。

初めて観た十代の時、その徹底した様式美と主演の岩下志麻の美しさに衝撃を受けた。題名にありながら一度も秋刀魚が登場しない演出にも唸った。

妻に先立たれた笠智衆演じる父が、岩下演じる娘を嫁に出すまでの話である。台詞に込められた日本人の奥ゆかしさと優しさ。父の悲哀が滲む。

もう十回は観ている。笠の年齢に自分が近づいているからなのか観る度に監督の意図が深く理解でき新たな発見がある。観れば観る程味わいを増す本作は秋刀魚というより私にとってスルメの味だ。

今年は不漁で秋刀魚が高騰している。なんでも初物は一尾500円で市場に並んだそう。この秋は代わりに秋刀魚の登場しない本作を久々に鑑賞してお茶を濁すとしようか。

 

 

 

 

⭐️ 今はプレイヤーを持たずとも Amazon Primeで名作を観られる。便利な時代になったものだ。けれど小津監督が生きてたら、やはりスクリーンで観ることを望まれただろう。時代は変わっても人が生きることの滑稽と哀しみは変わらない。ある時代を懸命に生きた日本人の優しい心が記されている、秋刀魚の味。

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