ほしいもは美しい宇宙だ
「佐藤卓」さんというグラフィックデザイナーをご存知ですか?
「ロッテキシリトールガム」や「明治おいしい牛乳」など、次々にインパクトのあるパッケージデザインを手がけ、商品をヒットに結びつけてきた広告界のプリンスと呼ばれている方です。
佐藤卓さん
私は、数年前から彼の仕事や言動に注目してきました。それは、茨城県の干し芋の産地であるひたちなか市の生産者の依頼を受けて、佐藤さんが干し芋をさらに全国の人たちに知ってもらうための商品開発を手がけるようになったからでした。
ふつう、グラフィックデザイナーやアートディレクターというのは、商品開発や広告を通じて商品の売り上げ、利益を出すきっかけを作ることがお仕事になるのでしょうが、佐藤さんの場合は、それがいつの間にか、地域全体を巻き込むものとなり、人々の意識を変えるきっかけとなっていったのです。
干し芋に関わっていらっしゃる方たちが最初に佐藤さんのもとに依頼にみえた時、彼がひらめいたことがあります。
それは、「学校」をつくることでした。
ついでに「ほしいも学校」という名前が浮かんでしまったのだそうです。干し芋は「ほしいも」と絶対ひらがなじゃなきゃだめで、学校は漢字じゃなきゃだめと強く思ったそうです。このあたりが非常にデザイナー的です。
そして、佐藤さんは依頼者の皆さんにこう言いました。
「ほしいもを通して宇宙を見ましょう、一緒に」
すると、依頼者の皆さんは「何を言ってんだ、こいつは?」という顔で唖然とされたそうです。でも、この佐藤さんの感覚、私はよくわかります。
宇宙は、一度意識し始めると、自分たちの外側に遠く在るものではなくて、いつだって私たちとともに在るもので、この世に存在するすべてのものはちゃんと宇宙を有しているのです。
佐藤さんは、いつもモノの背後にあるものの「関係性」を考えて商品を企画・デザインすると言います。例えば、水ひとつとっても、牛丼一杯つくるのに2000ℓの水が使われていることはほとんど知られていません。牛は大量に水を飲むし、牛が食べるエサを作るにも大量の水が使われているわけです。しかし、私たちの多くがその見えない水の部分には考えが及びません。
佐藤さんは、そうした見えないものを、今、目の前に見えているものとつなげ、人々にその関係性を伝えることもデザインの大切な役目のひとつと考えています。彼は干し芋の関係者からもあれこれと干し芋について質問し、商品の裏にある関係性を模索しました。
目の前に安全にきれいに商品となって存在する干し芋。
質問の中から、太陽の光だったり、水や土、色や経済や流通、栄養、農業、技術、商品、環境問題・・・ありとあらゆる要素が浮かび上がり、商品としての干し芋と密接につながりあっていることがイメージされました。
「これらのひとつひとつを、地域の人たちとまず勉強することから始めてみませんか?」
佐藤さんは、関係者にこう提案しました。
それが、結局はコミュニケーションの場にもなるし、商品開発がそこから生まれてもよいし、教育の場にもなるし、小学校でワークショップをすることなどにもつながる。そして、しだいにそのことが働いている人たちの士気を高めることになり、後継者不足の問題解消にもつながっていく。これには、関係者も納得しました。
そのコンセプトを実際の商品として表現しようと試みた佐藤さんは、「賞味期限のある本」を作りました。
*楽天のサイトより借用しました。http://item.rakuten.co.jp/kouta/c/0000000123/
「ほしいも学校」と書かれた箱を開けると、左にサツマイモ、右には教科書。佐藤さん自身が取材して、茨城の土地の歴史からサツマイモの種類や生産者さんの声、ありとあらゆるサツマイモに関してのあれこれを学べる教科書つきの商品となっています。
このプロジェクトは、商品の開発そのものに大勢の方が関わり、関係者も含め、改めて干し芋の持つ魅力を感じ直すきっかけをもたらしました。
色、カタチ、大きさ、しわ、粉、透明感、厚さ、手触り、重さ、味。
なぜそうなのか、という問いを通じて人々の意識は、やがてこうしたものを生み出す「環境」へと広がっていきます。
土、光、太陽、空気、重力、その他すべての要素に関連しながら目の前の美味しい干し芋ができることへとつながってゆくのです。
佐藤さんのこの方法論は、商品開発のみならず、市井に暮らす私たちが私たち自身のライフスタイルを見直す上でとても参考になると感じ、紹介させて頂いたしだいです。
「やっぱり干し芋って、美しい宇宙だな」
今日も美味しい干し芋を頬張りながら、パソコンのキーを叩いている私です。
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