共感と癒し〜治癒をもたらすもの

心と体

 

思うに、あらゆる癒しに共通する基本的な要素がなんであるかと考えたならば、きっとその答えは共感」なのではないか。

「共感」と「同情」というのは、大変似ているけれど、二つの言葉の意味するところは全く異なります。病める人を前にした治療家にとって、憐れみや感傷などはなんの役にも立ちません。クライアントの治癒にとって真に必要なのは、「もっと微妙でデリケートな心の通い合い」。それこそが癒しを促すのだと感じています。

治療家とクライアントに限らず、共感によって繋がった人間同士の間では、その時々の気分や思いというものは言葉を介さずとも直接伝え合うことができるのです。




■人間の思いはエネルギーを持つ

「相手のことが痛いほどよくわかった」、そんな体験あなたにもありませんか?これこそが共感と言えます。

同じ振動数を持つ音叉(おんさ)を2つ用意して、片方を鳴らす実験をします。すると、やがてもう片方も同じように鳴り始めます。叩かれた音叉が空気を伝わってその振動をもう片方の音叉に伝えるからです。

この音叉と同じように、人間も、お互いに共鳴し、ついには言葉では表現できないところまでも分かり合えるようになることができます。その時、言うなればテレパシーのような感じでお互いの気持ちは通じ合っているのです。

これと同じように、人が心に抱く愛情や憎しみさえも、全て共感がもとになっています。共感があるから、私たちは直観的に相手を理解し、直接相手の懐に入り込むことができるのです。

中央アフリカの先住民にピグミー族がいます。彼らの社会では、一人が「あの人はもうすぐ死ぬだろう」と思い、その思いが部族全体に広がって、それが確信にまで強まると、確実にその通りの現実が起こるのだと言います。

これは、部族全体の雰囲気や気分といったものが、その人に死ねと言わんばかりの強力なあつれきとなって、そこから逃げようにも逃げられないムードをつくり出し、思ったことを実現させてしまうエネルギーとなるからかもしれません。

 

■怒りや不満が治癒をもたらすこともある

確かに共感には、先にあげたような破壊的側面もありますが、反対に「癒し」をもたらす側面もあります。例えば、治療家が「この人は治る見込みがあるな」と、ふと思うと、実際に難治性のクライアントの症状が軽減したり、治癒する場合が少なくないのです。

それは治療する側の「思い」というものが、共感を通じて癒しを求める人へと伝えられるからです。そして、どんな困難な症状においても「治る見込みがある」と信じる人が多ければ多いほど、その効果も高まるように思います。

しかし、治癒に関して言えば、前向きでポジティブな気持ちばかりが癒しをもたらすばかりではありません。というのも、不思議なことに「否定的な感情」によっても治癒がもたらされる場合があるからです。

否定的な感情が引き金となって、抑えていた正直な怒りや不満といった感情が発散され、治癒に結びつく場合もあるのです。それは、心理療法などに限らず、どんな治療や癒しの場面においても少なからず起こります。ある種のタイプのクライアントにとっては、否定的な感情の発露が癒しを促すのにただ一つの有効な手段となることだってあるのです。

 

■ネガティブな感情と効果

例えば、重症のがん患者ばかりを相手に治療しているある医師のエピソードとして、自分の受け持ちの患者の全てが死んでしまっている中、ただ一人生き残っている女性に気がついたと言います。その女性は、以前から自分のがんに対して激しい怒りを感じており、彼女はその怒りゆえに生きながらえることができたのだとその医師は結論づけています。

また他にも、アルコール依存症の患者を対象とした断酒会の方法の一つに、患者の心の中の「絶望感」をギリギリまで引き出すという方法があります。

普通、絶望感はネガティブな感情と思われていますが、そうした感情を否定せず徹底的に味わうことによって、逆に謙虚さや感謝、この世に満ち溢れている大きな愛への気づきが生まれる場合があるのです。なので、一般的には避けるべきとされる感情も癒しのタイプによっては有効な刺激剤となるのです。

 

■人が真に癒されるためには■

なので、最初に述べたように、共感を感じあえる人間関係こそが癒しの基本ではあるのだけれど、共感も人によっては色々な次元の感情や態度が含まれており、時に怒りや絶望感のようなネガティブな感情もそこに入る場合があるというわけです。

それゆえ、憐れみや感傷といったある種の「同情」と「癒し」とを短絡的に結びつけてはいけない理由がここにあります。

「共感」が癒す人と癒される人の間に引き起こす感情の広がりは、私たちが日常経験している領域をはるかに超えてしまう場合はままあります。なので、もしも治療家がクライアントに癒しをうながそうとするならば、治療に役立つものである限り、それら全ての感情に目を向け、クライアント自身に意識化させる必要があります。

治療家が「〜しなければならない」といった頑迷な固定観念や先入観を手放し、ごく当たり前のようにクライアントに寄り添い、彼らが語る言葉が意味するところに純粋に耳を傾ける時、クライアントが本当に必要としているものが何なのかが見えてきます。

こうした共感的な理解、すなわち「ありのままの自分をわかってもらえた」と心から思える体験を通じてこそ、人はきっと真に癒されていくのでしょう。

 

 

 

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