一個のリンゴから「食物せんい」について考えてみる

食と健康

 

有名なヨーロッパのことわざに「一日一個のリンゴを食べれば医者いらず」というのがあります。

この言葉から、「リンゴはなにやら健康に良さそうだ」と、誰もが感じることでしょう。では、なぜ健康に良いのでしょう?ビタミンCを含んでいるからでしょうか?それともフレッシュな酵素を含んでいるからでしょうか?

人によって色々な意見があると思いますが、私は、リンゴが医者いらずなのは、きっと「食物せんい」を豊富に含んでいるからだと思うのです。




■食物せんいはカラダの中のお掃除係

私ごとになりますが、パートナーの実家が青森県のリンゴ農家で、義父母は高齢ながらとても元気で毎日畑に出て農作業に勤しんでいます。もちろんリンゴは真夏を除いてほぼ一年中口にするらしく、二人とも大病をすることなく、リンゴを食べれば医者いらずを体現しています。

リンゴの食物としての成分をみた時に、タンパク質や脂肪はほとんどなくて、炭水化物が主になります。中くらいの大きさ(約150g)のリンゴならば、約90キロカロリー。同じ重さの肉料理なら660キロカロリーとなり、実にリンゴの7倍以上になります。それでは、なぜリンゴが健康に良いのでしょう?

それは、リンゴに含まれるビタミンやミネラルのせいだけではありません。炭水化物の中に含まれるせんい質(植物を構成している物質)=食物せんいがリンゴには豊富にあるからなのです。

食物せんいは誰もが知るタンパク質や脂肪、ビタミン・ミネラルなどの栄養素とは異なり、血液中には取り込まれません。細胞や組織へは運ばれないのです。つまりは、ほとんどの食物せんいは体内で消化されず、カラダを通り抜けてうんちになって出て行ってしまうのです。では、なぜそのようなものが私たちの健康にとって重要なのか?

それは、カラダを通り抜けて行く時に、体内にあった不要な物質や老廃物、将来悪さをしそうな物質を一緒にかき取ってお掃除してくれるからなのです。

 

■精製食品の横行が多くの病気をもたらした

食物せんいが注目されるようになったのは、今から30年以上前、80年代のことですから、人類にとっては比較的新しく認識された栄養素と言えるかもしれません。

かつて人々は世界中どの地域においても、食物せんいを豊富に含む食事が主流でした。ところが、産業が発達し物質的に豊かになるにしたがって、特に欧米の豊かな社会において、精製小麦や精製砂糖の多い食生活が横行するようになりました。それにつれ、現代病として知られる多くの病気が一般に広まり出しました。

その病気とは、大腸ガンや憩室症、肥満や静脈瘤、胆石、糖尿病、ヘルニアなど。

憩室症とは、食道や胃、腸などの管状の臓器の一部が袋状に飛び出したもの。静脈瘤とは、血管に圧力がかかるなどの原因により血行障害が起こり、静脈が部分的に拡張したもの。ヘルニアとは、体内の臓器が組織が本来の位置から異常な位置へと脱出した状態を言います。

このように食事から食物せんいが不足すると病気が増えてしまうのは、一体なぜでしょう?

小麦も砂糖も、精製することで成分全体における糖質の割合が高くなり、血糖は急激に跳ね上がります。そうした時の血管内の血液は当然ドロドロで流れそのものを阻害し、血管を詰まらせたり、圧を高めて血管組織や臓器を飛び出させやすくします。また、インシュリンの大量分泌を招き、他のホルモンの分泌バランスも崩し、生体そのものに大きな負担をかけるのです。

 

■アメリカ人の死因第1位が心臓病なのは・・・

100年ほど前、アメリカ人は年間平均24キロものリンゴを食べていたと言われます。ところが現在は約9キロと減り、かろうじてリンゴを1週間に1個食べる程度になったと言われます。全粒小麦粉や豆類、新鮮な野菜から得られる食物せんいの消費量も1910年以降は50%以下に減ったという報告もあります。

一体何が起こったというのでしょうか?

1870年にローラー製粉機というものが発明され、以前は一部の金持ちしか手に入らなかった真っ白な小麦粉が一般にも販売されるようになったのです。この小麦粉から作った真っ白でふわふわのパンが、それまでのザラザラした舌触りの全粒粉パンに入れ替わった時こそが、食物せんいがヨーロッパの食卓から姿を消してしまった直接の原因ではないかと考えられます。

その後、間もなく、食品工業に従事していた人々は、加工食品が保存性が良いこと、消費者の嗜好をより満足させ、大量生産、利益拡大に結びつくことに気がつき始めました。さらには、食品から食物せんいを取り除き、代わりに脂肪や砂糖を添加するようになりました。

それから何十年かの間にスーパーの陳列棚には、全粒小麦粉、野菜、果物の概念を変えるような美しくパッケージングされた真新しい加工食品が並ぶようになりました。そして、その傾向は今なお続いています。

食物せんいを取り除かれたパンや菓子類、スナック菓子などを食べ続ければ、必ず便秘になります。そして、それを改善する目的で下剤に手を出すことになります。

アメリカ人の摂取する脂肪が増え、食物せんいが不足すれば、ますます人々は体重過多になります。心臓病はそのすぐ後ろにガンを引き連れ死因の第1位となり、長くその状態が続いています。

 

■栄養学者がアフリカで出会った「ある重大なこと」

初めは、こうした健康上の問題を「食物せんいの不足」と考える人はいませんでした。というのも、食物せんいは普通に食事の中にあって然るべきものだったからです。

昔は西洋社会においても、どの家でもリンゴのみならず、小麦、とうもろこし、きび、オクラ、豆類など、全ては自家栽培するのがあたり前だったからです。ところが、20世紀にはいると人々は都市へと移住し、もはや農業で生計をたてる人は少なくなって、新鮮な農産物が手に入りにくくなり、食品工業が提供してくれる手軽な食物を歓迎していくようになります。

しかし、全粒粉代わりの精白パンや、豆類を加えない肉だけの主食、丸のままのジャガイモの代わりにマッシュポテトだけを添えるのではカラダに良いわけはありません。こうして次第に先にあげた現代病が増加の一途をたどっていったのです。

しかし、その後、あるイギリス人の栄養学者によって食物せんいの重要性が説かれ、世の中に少しずつ栄養素として認識する人が増えていくことになります。

その栄養学者の名は、デニス・バーキット博士とヒュー・トローウェル博士。彼らはイギリスの宣教師として25年間アフリカで暮らしました。そして、赴任中、食べ物と健康に関する「ある重大なこと」に気づきます。

それが後の「食物せんい」の復活へとつながっていくのですが、その「ある重大なこと」とは何か?

それは、次回お伝えします。お楽しみに!

 

 

 

⭐️ 栄養学って、難解で面白くないものと思ってませんか?実は、それ間違いです!面白いかそうでないかは書き手によるのです。現役の管理栄養士であり、栄養学博士で教授も務める川島先生の説明は、大変深くて面白い!目から鱗のコラムも満載。抑えておくべき基本が頭にスラスラ入ってきます!

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