春に疲れた肝臓を養い元気にする方法

東洋医学の知恵

 

東洋医学的な見方をすると「春」というのは「肝臓」の季節です。

この季節は、気候的にも社会的にも「変化の時」と言えます。入学や就職など、それまでとはまったく違う生活環境に入ることも多くなりますよね。寒い冬から暖かな春へと向かい、温度が上昇し始めます。それに伴ってカラダの活動も眠りから覚め、盛んに働き始めるのです。代謝が活発になり、寒い季節にたまった不要なものを外へ排出する働きも盛んになります。

そうした毒素の排出を担う肝臓は、春になるとそれまでの季節よりも活発に働き始めるわけなのです。季節の変わり目はいつでもそうですが、カラダが調整に忙しくなって、それがスムーズに進まないと体調不良として感じます。

今回は、そんな春に疲れた肝臓を養い元気にする方法をお伝えします!




■肝臓が毒素の排出に疲れると出てくる症状

肝臓が一年中でもっとも活発に働くのは、先にお話した通りです。その働きの中心となるのが毒素の排出」。代謝が落ちていた寒い冬に溜め込んだ毒素や不要物を一気に排出しようとするわけです。ところが、この作用が強すぎるとカラダの反応や体感に不調を感じることになり、種々の不快な症状として現れてくるのです。例えば次のようなもの。あなたは心当たりありませんか?

 

●痔が悪化しやすい。出血しやすい。

●生理の経血が増える。痛みが強まる。

●皮膚や粘膜のトラブルが出やすい。

●目が疲れる。しょぼしょぼする。

●アレルギーの反応が出やすい。悪化しやすい。

●精神が不安定になりやすい。イライラしやすい。怒りっぽくなる。

●痛みや炎症、むくみが長引く

●エネルギー不足で疲れやすい

 

これらの症状がこの頃気になるというあなた。もしかしたら肝臓が疲れているかもしれません。春の養生法を知ってしっかり体調を整えましょう。

 

■女性の皆さん、春風にご用心!

春の養生法のポイントは、少しずつ心やカラダをオープンにしていくこと。日本では春になるとお花見をしますが、中国の有名な気功家曰く「お花見は日本の気功法」だと言います。

桜のパワーは「陽」の気に溢れていて、桜が咲くことで長い冬が終わりを告げ、人間の心も陽の気を受けて咲き始めるのであると。それは陽の季節に入ることを知らせるサインであり、一日で言えば朝と同じなのだと。

春は徐々に暖かさを増してくる季節ですが、養生法から言えば、すぐに薄着になることはよくありません。自然界は春になっても人間のカラダというのは少し遅れて春になるからです。春は、カラダの芯から暑く感じるくらいまで洋服を少し厚めに着たほうが健康的には良いのです。特に春の初めは半分冬みたいな方法で温めることが大切だと気功の名人は伝えます。

あと注意すべきは「風」です。春のお肌は弱く、緩んでいるため風から冷たい邪気が入りやすい状態にあるのです。特に女性は春の風に肌をさらすと年をとるのが早まると言います。それを防ぐには、化粧品などでオイルを含んだものを用いること。そして、短いスカートなどははいたりしないこと。

スカートの下から侵入してくる春風は子宮にたまりやすく、それから冷え性や不妊症などの病気にかかりやすくなると考えられるからです。

また春風は首筋にある風池というツボからもカラダに侵入しやすく、風邪を引く原因になったり経絡を詰まらせたりします。なのでしばらくはスカーフなど巻いて首を風にさらさぬことも大事です。また、春は陽を養う季節ゆえ、汗を出して冷たい邪気を出すことも必要です。導引や軽い体操などを風のない場所で行うと良いでしょう。

 

 

●風池の位置 *画像はせんねん灸さんのサイトからお借りしました。

https://www.sennenq.co.jp/knowledge/tubo13.html

 

■春の食べ物養生法

春の養生法として気をつけるべきことは、何も暮らし方についてだけではありません。食べ物についてもいくつか注意すべき点があります。アルコールの過飲を慎むのは当然として、高タンパク高脂肪のものは食べ過ぎないことです。

タンパク質と脂肪の分解・解毒は肝臓の仕事です。特に動物性のタンパク質の分解作業は肝臓にとって大いに負担のかかる仕事になります。なのでお肉の大食いはいただけません。もちろんカラダをつくる上でタンパク質は必要なのですが、肝臓を養おうと思うならこうした食品の摂取を控えめにすることです。また、動物性であっても比較的分解する際に負担の少ない卵を少量とか、植物性食品である大豆製品などを摂ることは良いです。

また、シジミに含まれるオルニチンは、体内にも存在するアミノ酸の一種で、タンパク質の分解によって発生する毒性物質を、肝臓が解毒する際に働きます。口から摂取しても肝臓にたどり着いてその働きを手伝うので、肝臓の負荷を減らすのに役立ちます。時々お味噌汁の具として使われると良いでしょう。

また、陰陽五行の考え方からいくと、春は「肝臓・胆のう」のエネルギーに属し、五味で言えば「酸味」が関係します。この酸味が関係するというのは、この味覚を摂り過ぎても、摂らなさ過ぎても良くないのです。だから、肝臓の調子の悪い人でお酢など酸っぱい味を摂り過ぎている人は少し控えめにして、全く摂っていない人は少しずつ摂られるようにすると調子が整います。

また、五行を活用する上で、隣り合うエネルギーは互いに「相生関係」と言って活かし合う関係にあります。

 

 

●小太郎漢方製薬株式会社さんのサイトからお借りしました。

https://www.kotaro.co.jp/kampo/kiso/kampo_sikitai.html

 

もし肝臓の調子の悪い人で、お酒の飲み過ぎによって腫れているように感じる場合、これを「実証」と言いますが、矢印方向の心臓・小腸のエネルギーと関係する「苦味」をもつ味、例えば、青汁などを摂ると肝臓の腫れが引きやすくなったりします。

反対に、全体的に肝臓が弱っている、パワーが足りないと感じるような時、これを「虚証」と言いますが、こんな場合は、反矢印方向の「鹹(かん)味」=塩からい味が薬になります。昆布やごま塩などの塩からい味を摂ると、肝臓のパワーを補うことができるのです。梅干しのように鹹味と酸味の両方を含むものは特におすすめです。

さらに五行には、「相剋関係」と言って打ち消し合う関係性もあり、図を見たときに「辛」から肝臓の「酸」に向かって星型に点線矢印が描かれているような関係は、その対象となるエネルギーを弱めてしまいます。図で言えば、香辛料の胡椒や唐辛子、スパイスなどの辛いものを食べすぎると肝臓を弱めてしまうという意味になります。肝臓の調子が悪い時は、辛いものを控えようということです。

陰陽五行の法則はこのようにして、日常生活で活用できることが多いので、ぜひ覚えておかれると良いでしょう。

 

■肝臓を温め、ゆっくり休ませる究極の回復法

肝臓は大量の血液を蓄えている臓器です。この肝臓を温めることによって血流が良くなり、その働きもとてもスムーズになります。腹部、特に肝臓が位置する右肋骨の下あたりを、腹部側と背中側両面から温めるのは効果的で、きっと疲労回復を実感されるでしょう。

私がおすすめするのは「コンニャク湿布」。これは非常に気持ち良く、一度その良さがわかると病みつきになります。ではその方法をお伝えしましょう。

 

<コンニャク湿布の方法>

 

●準備するもの

コンニャク 2丁、フェイスタオル5~7枚、お鍋

●手順

①コンニャク2丁を熱湯を沸かした鍋の中に入れ、10分間ゆでる。

②コンニャクを1丁ずつフェイスタオル2~3枚で包み、温度の調節をする。フェイスタオルは1枚ずつ半分に折って使う。(*この時、コンニャクの温度はかなり高温になるので注意)

③あお向けに寝て、包んだコンニャクを肝臓とおへその下の丹田あたりおいて20~30分ほど温め、左のわき腹の脾臓あたりは冷たいタオルで冷やす。温め終わったら、最後に冷たいタオルで肝臓のあたりを1分間冷やす。

④時間に余裕があれば、再び温めたコンニャクをタオルで包み、うつ伏せになって左右の腎臓のあたりに当てる。

 

本当はコンニャク湿布が一番なのですが、時間がないのであれば、使い捨てカイロなどでこの部分を温めるのも良いです。ぜひお試しください。

 

■いつでもどこでもできる刺激法

「お湯を沸かしたりコンニャクを準備したりする手間がかけられない。何か道具を使わなくてもできる刺激法ってないの?」そうおっしゃる方もいらっしゃることでしょう。そんな時には手のひらにある反射ゾーンを刺激する方法をお伝えしましょう。

肝臓はカラダの右側に位置する臓器です。なので、肝臓が疲れたり、弱ったりすると右肩や右背中が凝ったり、首の右側に痛みが出たり、カラダの右側に不調として現れることが多いです。そして、刺激のための反射ゾーンも右手にあります。写真で表すと次の通り。

 

●右手にある肝臓の反射ゾーン(白丸部分)

 

手のひら側を自分の方に向け、右手の小指と薬指の間から少し下がった白丸のあるあたり。このゾーンが肝臓と間接的に繋がっています。ここを左手の親指で押してみると硬かったり、びりびりと響きのようなものを感じるところがあると思います。ここがかなり痛く感じたり、響きが強い場合はかなり肝臓が疲れているサイン。

ここを1~2分ほど揉みながら刺激します。毎日気がついたら刺激することを続けます。やがてコリがほぐれてくれば痛みを感じなくなるはずです。根気よく続けていると次第に肝臓も元気を取り戻すはず。先ほどのコンニャク湿布と合わせて行うとより効果的です。

またこの白丸のゾーンが当たるように右肋骨下に位置する肝臓に直接手を当ててその上に左手を重ね静かに圧を加えるのも良いです。2~3分当てじっとしているとその部分が暖かく感じてきます。時に胆のうの動きを感じることがあるかもしれません。こうした持続的な圧刺激も肝臓を元気にするのに適しています。簡単ですからやらない手はありませんね。

 

■春の睡眠について

睡眠不足は、カラダの活動時間が長くなることによって起こります。さらには肝臓が活動のためのエネルギーを供給しなければならない時間も長くなります。ただでさえ肝臓が忙しい春に、睡眠まで不足するとますます内臓疲労が残り、春に眠くなる原因のひとつとなります。

東洋医学的に言えば、春は夜更かししても良いけれども、朝は早起きすべき季節です。しかし最近、スマートフォンやパソコンなどの長時間の使用により睡眠が妨げられるケースが増えています。特にパソコンよりも手軽に使え、いつも身近にあるスマートフォンは常に目に刺激を与え、画面から発せられるブルーライトで脳を覚醒させます。

脳が覚醒する刺激というのは中毒性があるもので、用事がないのに気がつけばいつもスマホを操作してしまうという人も多いのではないでしょうか。おまけに目は肝臓と関係の深い器官で、目の酷使は間接的に肝臓を弱めてしまいます。

睡眠不足は心身共によくありません。睡眠前はしばしパソコンやスマホから離れ、思考を止めて心静かに瞑想タイムといきたいところです。

 

肝臓は、臓器の中で唯一、ある程度は自分自身で再生する機能を備えています。それは、それほどまでに大切な臓器であるがゆえ、自然が与えた機能であると思えてなりません。さらに肝臓は「沈黙の臓器」とも呼ばれ、肝臓の病気の多くは、かなり進行しないかぎり痛みや症状として現れることがないのです。

人一倍働き者で、無口で実直な肝臓という名の臓器。そんな肝臓が春には特に苦労しています。あなたも肝臓の声に気がついたら、ぜひ、いたわり大切にしてあげてくださいね。

 

 

⭐️ 読みやすくとてもわかりやすい陰陽五行のガイドブック。変化する四季に合わせ人間はどんな風に暮らせば良いのか?その答えがここにあります。養生法は何も特別なことじゃない。それは自らの心とカラダを慈しみ、それぞれの季節を気持ちよく呼吸することなのだと教えてくれます。

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