東京、クシ・マクロビオティック・スクールで講義しました!

マクロビオティック

 

人のご縁て本当に不思議なもので、以前は人前に出て話すのが大の苦手だったこの私が、今は時々講座を持ち、お話をさせていただいています。

現在の私だけしか知らない人は、誰もが一様に「信じられない」と驚きます。「noahnoahさんて全然緊張しているように見えないし、むしろかなりの話好きじゃないですか」と。「じゃなければ、予定の講義時間を30分以上もオーバーしませんよ」と(笑)。

いえいえ。20代の頃、結婚式の友人代表で本番直前にスピーチの原稿をなくし、ほぼ無言で挨拶を終えるという大失敗をやらかしてからの自分は、それがトラウマとなり、大勢の前で話をすることが恐怖となった時期が長く続きました。スピーチを頼まれるのがいやで、いざ話をする段になると頭の中が真っ白になり、しどろもどろ。話す内容にも起承転結がなく、まるで季語を忘れた初心者の俳句か、意味不明の壊れたツイッターみたいでさんざんなものでした。

でもね。人間て、変われるんです!

今は昔ほど緊張せずに人前で話ができるようになったし、むしろ、話すことが好きになりました。そんなきっかけをくださったのは、マクロビオティックの恩師・久司道夫先生(故人)と、同じくマクロの仲間で親友のパトリシオ。

 

●久司道夫先生(1926-2014)

 

久司先生は生前よく、ご自分の講演会で突然私を指名され、「宮本くん(私のリアルな苗字です)、世界旅行で体験したことを何か皆さんに話して聞かせてください」とスピーチを求められました。また、パトリシオは日本にできたKIJ(マクロビオティックの学校)で私に無理やりボディワークのクラスを担当させ、逃げる出口をふさぎました。

二人のおかげで、この私もいつの間にか苦手を克服でき、話すことを通じて今もたくさんの恩恵をいただいています。

だから現在、人前で話すことが苦手なあなたも決して心配することはありません。人は変わることができるんです!むしろ、話すチャンスがあれば積極的に引き受けて、場数を踏んでみてください。きっとあなたの中で何かが変わりますから。




■スクールのエントランスから■

そんなわけで、前ふりが長くなりましたが、先週末、東京・代々木上原にあるクシ・マクロビオティック・スクールでボディワークの実技指導と講義をさせていただきました。今回はそのご報告です。

実は、昭和家屋を利用したこの校舎、昨年、リフォーム前夜に訪れたことはあったのですが、開校してからは今回が初めての訪問となりました。エントランスも教室も随所に手作りした温かさが感じられてとてもアットホームな落ちついた空間に仕上がっています。

スクールの設立者であり長年来の親友であるパトリシオに導かれ、この校舎のエントランスに立った時、私は不思議な懐かしさと深い安堵感に包まれました。

 

●スクールエントランスと設立者のパトリシオ(相変わらずいい男です!)

 

現在までの日本におけるマクロビオティック運動のおよそ半世紀近くを、北の大地から眺めさせてもらった身としては、1990年代以降のマクロビフィーバーには、功罪両面があったように思われます。

本来は、この国に伝わる伝統食をベースにした生活法であったマクロビオティックが、いつの間にやら世界的に脚光を浴び、セレブと呼ばれる文化人や著名人がこぞってライフスタイルとして取り込み、それをメディアが取り上げるカタチで世界中、多くの人が知るものとなりました。

しかし、その本質は、自身と家族、そして周囲の人々が健康で平和に人生を生きるための祈りであり、暮らし方であったものが、ここ30年、それが神話化し、ファッションとして取り込まれ、マクロの業界自体もそれを良しとしながら肥大化し、いつのまにか大きく本質から離れていったように思います。

そして、ファッションというものは常に新しいものが古くなり、すでにあったものを否定することで新しく現れたものが生命を得るという性質を持つものでありますがゆえ、ファッション化してしまったマクロビオティックも食のトレンドとして見た場合、やがて後から出てきたローフードや糖質制限食によってトレンドリーダーの座を駆逐され、現在に至ってしまうわけであります。

 

■小淵沢とマクロビオティック教育活動■

確かに、今はなき久司道夫先生はマクロビオティックの歴史における一人の巨人であり、カリスマであり、その力を利用して業界そのものが大きく成長・発展してきた30年ではありました。

21世紀に入って、自然派化粧品メーカー大手であるアルソアさんが子会社ライフサポートを通じて、久司先生の理念に共感しサポートするカタチで「KIJ(クシ・インスティチュート・オブ・ジャパン)」が設立され、山梨県小淵沢の森の中に立つ美しい建物をその校舎とし、マクロの教育活動がスタートしました。

 

●かつての KIJ校舎(山梨県小淵沢)

 

そこの講師及びコーディネーターを任せられていたパトリシオとのご縁で、この一地方都市に暮らす一介の治療家にすぎない私がボディワーク講師の仕事を命ぜられたわけです。

私がクラスを担当させていただくということで、初めて小淵沢の校舎に招待された時にはその立派さに驚きましたよ。なんせトイレのドアノブにはトルコ石が埋め込まれていて、床には大理石が敷き詰められているんですから。おまけに講師控え室には、高級そうな猫足のソファーにテーブルですもん。北海道の農村生まれでニトリの家具しか知らない私は軽いめまいを覚えたもんです(笑)。

聞くところによると、その建物は日本がバブルの真只中に建てられ、かつては矢沢永吉さんやSMAPなど有名アーティストがアルバム制作のために何日も泊まり込んで作業をしていたレコーディングスタジオだったそうです。

「こんな環境の中でマクロビオティックを学べるなんて夢みたい」まさに多くのマクロビアンがそう感じたと思います。

しかし、ビジネスとは常に利益を追求しなければならないものであり、マクロビオティックとは祈りであり生活法でありますから、その両立というのはなかなかに難しい。食材ひとつとっても真に食べる人のことを考えれば安全、安心なものを提供しなければならないわけで、本当なら原価を安くし、高く売れば利益は大きいのだけれどそれができない。しかし、儲かる企業はどこもそれをやってます。

正直であればあるほど大きく儲けるのが難しい。それがマクロビオティックとビジネスとの関係なのであります。その中で企業はビジネスを継続するために工夫することを強いられます。後年、アルソアさんも宝塚出身のモデルさんをスタッフに起用して渋谷ヒカリエに店舗を出店したり、青山にスタイリッシュなカフェとクッキングスタジオを開設したりセレブ路線をひた走ることになります。

アルソアさんは、世間的なマクロビオティックの知名度を上げるために貢献してくださったと思いますし、私自身、会社からもスタッフの皆さんからも本当によくしていただきました。しかし、私の中では「これはマクロビオティックの本質とは少し違うのではないか」という思いがどんどん大きくなっていったのも事実なのです。

 

■マクロビオティックの本来のカタチとは?■

そして一昨年、アルソアさんは事実上、10年目を節目として日本でのKIJの活動を終了。パトリシオがそれを引き継ぐカタチでクシ・マクロビオティック・スクールを設立し、ここ代々木上原の地で新たに開校とあいなったわけです。

私がこのスクールのエントランスに立って感じた安堵感。それは「マクロビオティックって本来こういうものだったんだよね」という気づきです。

ビオクラさん(アルソアさんの子会社)が青山に用意されたクッキングスタジオもそれはそれで美しく素晴らしいものではあったのですが、ソリッドでメタリックで、生き物としての自分が寛ぐにはあまりに緊張を強いられる空間に感じました。例えていうなれば、それは「クリスチャンラクロワ」のデザインしたタキシード。かっこいいけれど、一日中着ていたらきっと肩が凝ります。これ着てそば屋で冷やしたぬきなんかまず注文できません。

対して、代々木上原のマクロビオティック・スクールは国産メーカー「鎌倉シャツ」が作るコットン100%のボタンダウンシャツ。決して奇をてらったデザインじゃなく普段着にもなるのだけれど、着る人によってその人柄や個性が際立ち、着込むほどに愛着の湧く実用的で身の丈にあった一着といったところでしょうか。

「祈り」と「暮らし」は、いつだって私たちと共にあるものであり、私たちから遊離したものであってはなりません。言ってみれば、それはまさに「普段着」であるべきなのです。

 

■久司先生の印象に残る言葉■

私が20代の頃、世界旅行を敢行し、ある時期、アメリカのボストンにあった久司先生のご自宅、通称・久司ハウスに長く居候をしていたことがあります。そこには、大きなダイニングルームがあり、ここで私はよく、久司先生とお昼ごはんを食べながら一緒にお話しさせていただきました。

当時、すでにマクロビオティックのことがメディアで紹介され、多くの有名人やアーティストがハウスには出入りしていました。80年代ポップスの女王オリビア・ニュートン・ジョンやジャズ界の重鎮スタン・ゲッツなどがよく健康相談に訪れていて、私なども何度かオリビアからかかってきた電話を久司先生に取り次いだものです。

 

●オリビア・ニュートン・ジョン(彼女を知ってるあなた!きっと私と同い年・笑)

 

ある日、久司先生とダイニングで一緒に昼ごはんをいただいていた時、先生が私に言われた言葉をふと思い出しました。それはこんな言葉でした。

「マクロビオティックが今、アメリカでブームになりつつあります。アメリカで起こることはやがて日本でもそうなるでしょう。マクロビオティックが多くの人に知られることは大変好ましいことです。けれど、私はむしろブームになることを心配している。ブームというのは、生まれて、ピークを迎え、やがては終わる一つの現象にすぎない。けれど、マクロビオティックは人間の生き方であり、暮らし方です。一時の流行ではなく一生続いていくことなのです。そこのところをちゃんと理解してくれる人が増えていってくれることを私は望んでいます」

 

パトリシオがこれから目指そうとする学校の理念も、まさに久司先生が願われたのと同じものであることをスクールの雰囲気から感じ取り、私は安堵したのでした。きっとあちらの世界で久司先生も喜ばれていることと思います。

 

■マクロビオティックは日々の暮らしの中にある■

その後、久司ハウスを後にした私は、ヨーロッパ、そしてアジア諸国を旅し、世界中様々な場所でマクロビアンに出会いました。中には、私が日本人というだけで握手を求めてくる人や、感激して泣き出す人さえいました。

聞けば、マクロビオティックと出会ったことでお医者さんが匙を投げたはずの病気が良くなったとか、食べ物のことだけでなく環境や社会のことも考えた食事法なんて素晴らしいという理由からマクロを実践している現地の人たちがいて、私がマクロビオティックの発祥地である日本から来たというだけで、喜んでくださったり、尊敬してくださったり、親しく思ってくださるわけです。

これは、多感な年代の若者にとっては大きなカルチャーショックです。この体験により、子供の頃は大嫌いだったはずの私自身のマクロビオティックに対する見方も次第に変わっていきました。

実際、私の祖父もマクロビオティックの食事法で病院では見放された心臓病を克服し、医師から死を宣告された倍以上の年月を元気に生きることができました。今では私が考えるマクロビオティックも一時的なブームやファッションなどではなくて、それは一つの生き方であり、毎日の暮らしそのものと捉えるようになりました。

しかし、時代が変わるにつれ、人々の食生活や体質が変わるように、マクロビオティックも古いものを大切にしつつ新しいものを取り入れる寛容性が求められています。冒頭に登場したローフードや糖質制限食の考え方の中にも役に立つものがあります。

未来のマクロビオティックは、変わるものと変わらないもの、そのバランスを見極め調和させていくことが命題でもあると感じています。講座を担当させていただくクラスでも、そのことはいつも生徒さんたちにお伝えしたいと思って臨んでいます。

 

■講座当日の様子とある気づき■

今回、私が初日に行った講座。タイトルは『からだ・こころ・いのち〜3つを調和させ、人生の苦悩を3分の1軽くする方法』

ここでは、私たちの正体が一体なんであるのか?という考察を、いくつかの実験を交えながら皆さんと一緒に試みてみました。用意したのは底に穴の空いた紙袋。マクロビオティックの講座でありながら、受講生の皆さんにはいきなり2人1組になっていただき、紙袋に顔を入れ、互いに覗き込むように命じます。

突然の思いもよらぬ要求に戸惑う受講生。その様子を面白がりながら私が矢継ぎ早に質問を繰り返し、それについての答えを考えていくうちに、本当の自分の正体に気がつくという摩訶不思議なワークです。

 

 

●紙袋を覗き込むように命ぜられ戸惑う受講生とそれを眺めて喜ぶ私。

 

かなり難解なテーマでありながらも、皆さんなんとかついてきてくださり、講座終了後、ある生徒さんのお一人から「実は私、今まで仕事で悩みを抱えていたんですけど、今日の講座でその悩みが軽くなって、よし、前に進もうって考えられるようになりました!」と、ご感想をいただきました。

人生に悩みが生じるのは、その全体像が見えていないことと、本当の自分とは一体何者であるのか忘れてしまうことが原因です。それを思い出し、理解していただくことでマクロビオティックが単なる食事法ではなくて、ひとつの大きなモノの見方であることを知る手がかりともなるのです。

 

二日目は「ボディワーク実技」。前半は「自然体とはなんであるのか?」をテーマに、お一人おひとりに自然体を体感していただき、日常私たちに働くエネルギーを「物理エネルギー」と「想念エネルギー」に分けてこれもそれぞれ体感していただきました。最後にはパトリシオのスクール用に私が新たに開発した全身調整法を初お披露目して、ペアを組んでいただき、実際に施術しあって終了。ほぼ丸一日のプログラムであるにもかかわらず、皆さん熱心に学んでくださいました。

今回、週末のお忙しい中、クラスにご参加くださった皆さんに深く感謝申し上げます。そして、この機会を与えてくれたパトリシオ夫妻とファミリー、マクロビオティックの道を切り開いてくださった全ての先達に心から感謝いたします!

これから私もパトリシオ夫妻と協力して、単なるファッションやトレンドではない、地に足のついた理想とすべきマクロビオティックの啓蒙と教育活動に今まで以上に尽力していきたいと思っています。

 

そして、もう一つ。二日間にわたったクラスで、私の中に「ある気づき」が生まれました。それについてはまた次回お伝えしたいと思います。

 

 

 

⭐️ マクロビオティックには様々な個性を持った指導者がいます。私が今気になるのがこのお方。書かれている内容を拝見すると鋭く、深く、そして温かい。ぜひ一度お会いして、お話ししてみたいと思うお一人です。

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