スコトーマ(盲点)とコウモリの話

暮らし

人間とは、生きてるといつの間にか、様々な「思い込み」というものを自分の心の中につくってしまう生き物です。そして、いつしかその思い込みは「スコトーマ」となって、この広い世界を眺める視野を狭め、現実をありのままに捉える感覚を鈍くしてしまいます。

スコトーマは「盲点」という意味で、もともと目の構造上どうしても見えない暗点のことを表す眼科医の専門用語ですが、最近では心理学用語としても使用され、「心理的盲点=スコトーマ」として使われることも多くなりました。

私たち人間がモノゴトを認識する時というのは、視覚、聴覚、嗅覚、触覚、味覚の五感で受け取った情報を一度脳に送りますが、これら全ての感覚を受け取る時には、「過去に受けた経験の強い記憶」と、「これから新しく受け取る五感の感覚」を繋ぎ合わせて脳は認識します。

それゆえ、これから受け取るであろう体験が、たとえ今の自分にとってプラスの情報だとしても、過去の不快な記憶と結びつけて認識してしまうと、まだ経験していないにも関わらず、これから体験することを否定的に捉えてしまったり、遮断してしまったりするクセがあるのです。これがいわゆる「思い込み」ですね。

思い込みがあり、スコトーマがあると、モノゴトの真実を正しく捉えることができず、自分の可能性を開くチャンスをみすみす逃してしまうことにもなりかねません。

私自身、常々、思い込みを持たずに自由で公平に世界を見るように心がけているつもりなのですが、それでも最近、「あること」をきっかけに、こんな自分にも頑固なスコトーマがあったんだと大きく反省させられる出来事がありました。それは、コウモリにまつわるこんな出来事です・・・




■重要度に合わせて仕分けをする脳

コウモリの話題に入る前に、脳についてもう少しお話ししたいと思います。ふつう、私たちが五感から受け取った情報というのは、一度脳で受け取られて判断され、次の二通りの情報として仕分けされるようになっています。

①この情報は重要である。
②この情報は重要ではない。

これらは、短い期間での記憶を得意とする海馬と、長い期間での記憶を得意とする側頭葉の働きによるもので、毎日たくさんの情報と付き合わなければならない私たちの脳を最適な状態に保つために自然が与えてくれたしくみです。

先に述べたスコトーマ=心理的盲点とは、過去の記憶をもとにして現在の五感と結びつける脳の働きと、重要な情報だけを選んで長期記憶しようとする脳の働きが合わさって、脳の中に重要でないものは排除して見ないでおこうという状態をつくります。

このスコトーマが生まれる最大の要因は「思い込み」があるからです。思い込みがあると視野が狭くなり、本来見えるものも見えなくなってさらなるスコトーマを生んでしまう結果となります。これを取り除くには、できるだけ柔軟な思考で過ごすように心がけるということと、これまで正しいと思っていたことの全てを疑ってみることが大切です。私自身、それを痛感させられたある出来事がありました。

 

■ある真面目なクライアントさんとの出会い

肩こりがひどく首が回らないということで、知人の紹介で来院されたある男性のクライアントさんがいます。長年、環境問題に関わる研究者としてのお仕事に従事され、科学的思考を得意とする知的雰囲気に溢れた方で、少し話をさせていただくとその生真面目さが伝わってきます。カラダに触れると、やはり過度の緊張を長年抱えてこられたような強張りを筋肉に多く溜め込んでいらっしゃる。

整体の治療を受けられるのは今回が生まれてはじめてとのこと。1度目の施術後、首を動かしていただくと、明らかに可動域が広がり症状が改善しているにもかかわらず、ご本人は「その違いがわからない」と硬い表情でおっしゃる。きっと普段、数字データなどの客観的な資料をもとに研究されている方ゆえ、主観的な感覚を重視されていないのかもなと思いながらも私は多少凹みました。

その後、何度か診させていただいたのですが、やはりその方からは毎回ある種の学者的・研究者的固さが感じられ、私のアプローチが通じにくい雰囲気は増大するばかり。私自身は、学生時代も優等生からは程遠い遊び人的・落第生的人生を送ってきたため、まるでその対極にある人生を送ってこられたような真面目な方とは、どうも接点の合わせようがない感じなのです。

・・・ところがそんな治療家とクライアントの関係性に大きな変化が起こりました。

 

■世界には「国際コウモリ会議」なるものがあるらしい

ある日のこと、施術中に仰向けになっていただいた時、そのクライアントさんの着てらっしゃるTシャツのプリントが目に入りました。そこに書かれていたのは、「International Bat Conference」の文字。

日本語に訳せば「国際コウモリ会議」となります。私は思わず彼に訊ねました。

「コウモリ会議・・・、なんてあるんですか?」

 

すると、彼はこう答えました。

「はい、これは以前、ヨーロッパで開催された会議に出席した時もらったものなんです」

 

「えっ!!」

 

聞けば、昔からコウモリの生態に興味があった彼は、本業の研究とは別に自費でコウモリについて長年調査研究し、国際的な研究誌に英語で論文を発表しているほどの熱心なコウモリ研究家なのでした。その事実に驚嘆した私でしたが、さらにその後、もう一つの衝撃の事実を知らされ、思わず心震わせることになるのです。

何を隠そう、私は子供の頃から少し怖い感じのするものに興味を惹かれる性分でした。ミイラや妖怪、洋館や黒魔術、占い・・・、特にミイラなどは、若い頃、自分の中のマイベスト・ミイラに出会うために世界中を旅して歩いたほどなのです。

その興味を惹かれるものの中には、実は「コウモリ」も含まれていました。幼い頃、怪奇映画『ドラキュラ』ではじめて目にしたコウモリ。その奇妙なシルエットといい、ネズミのような鳴き声といい、生き物の血を吸って生きるというその生態といい、怖い感じマニアの私にとってはたまらない魅力を兼ね備えた動物、それがコウモリだったのです。

ところが私の暮らす北海道には、コウモリと出会う環境がありません。コウモリが夜行性であることと、冬が長くて厳しいということもあるでしょう。しかし、少年時代、私がこの北の大地においてコウモリ探しを断念する直接の原因となったある出来事がありました。

 

■コウモリ=会えない憧れの生き物

私が小学生の頃、ある年の夏休み、近くの森にコウモリを捕まえようと一人虫取り網を手にして出かけたところ、偶然、道の途中で出会った中年男性に「坊や、何捕まえに行くの?」と声をかけられました。

「コウモリを捕まえに」と答えたところ、その男性は大げさに腹を抱えて笑うと、私にこう言いました。

「坊や、バカなことを言うもんじゃない。コウモリは雪のある北海道にはいないんだよ。暖かい本州にしかいない生き物なんだ。そんなもの捕まえようとしないで、普通にクワガタ捕まえたらいいじゃないか」

その大人の吐いた言葉は、まだ少年であった私の心をひどく傷つけました。自分の無知が露呈された上、自分の行動を否定されたような気がして、私はすっかりコウモリ取りの意欲を失くし、森とは反対のもと来た道へ向き直すと一目散に家に向かって駆け出しました。

それから私の中ではずっと、「雪のある北海道にはコウモリがいない。本州にしかいない生き物なのだ」という観念があたかもこの世の常識であるかのように意識の底に棲み着き、「コウモリ=会えない憧れの生き物」という概念がいつのまにか心に強く刻まれたのです。

なので、二十歳を過ぎて、友人の暮らす新潟県・長岡市を訪ねた際、夕暮れ時に市内を流れる川の堤防で、群れをなしてキーキーと鳴きながら乱舞する奇妙な生き物のシルエットがコウモリのそれであることを知った時の感動と言ったらありませんでした。その飛び方といい、鳴き声といい、今まで見聞きしたことのない異質な存在感を醸すそのコウモリの魅力に憑かれ、夕日が沈むまでうっとりとして立ち尽くす私を友人は唖然として眺めていたほどです。

まだネットのない時代、コウモリについて何の知識を得られるはずもなく、私はあの夏の日、道端で出会った男性の言葉を疑いもせずに大人になり、以来この40年以上を生きてきました。

 

■コウモリにまつわる驚愕の事実

「国際コウモリ会議」なるものがあり、私のクライアントさんがその会議に研究者として参加しているという事実に驚いた私ですが、どうしても解せないことが一つありました。

それは、コウモリが生息しているはずのないこの北海道で、どうやって彼はコウモリを研究しているのだろうという疑問でした。動物は生き物であり、重要なのはその生態なはずで、それはネット情報や書物で得られるものではありません。もしかしたら休日を利用して北海道から本州に出向き、通いでフィールドワークをしているのでしょうか。

 

私は、率直にその疑問をぶつけてみました。

「ところで一つ質問なんですが、コウモリのいないこの北海道で、どうやってその生態を研究されているのですか?」

 

・・・そこで返ってきた答えに、私は驚きのあまり思わず大きく口が開き、しばし閉めることを忘れていました。

 

その時、彼ははたして何と答えたのか?

この続きは、次回お伝えしたいと思います。

 

 

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