最近は少しずつ「食の安全性」について考える方が増えてきました。
そうした方は、子どもに安心して食べさせられるものだろうか?環境に配慮してつくられたものだろうか?・・・そうした観点から自分で色々調べ、安全な食品を探して、少々高くても良いから納得したものを購入したいと、そのような努力をされています。
野菜の安全性を考えた時、必ず出てくるのが「農薬」の問題です。
そして、農薬の危険性について書かれた本を読んだり、テレビ、新聞・雑誌などのメディアで取り上げられているのを見たりして「農薬はカラダによくない。危険なものだ」というイメージを持たれていると思います。
しかし、どんなモノゴトにも必ず良い面と悪い面が存在します。自分が見て判断しているのはどちらか片面だけなんていうことが往々にしてあるのです。モノゴトは俯瞰してみなければなりません。農薬もまた然り。
常々、そんな風に考えていたら、ネットで自然農を営まれている若い農家さんを知りました。彼はホームページを運営し、ご自分の考えを動画を通じて社会にアピールしています。
その主張が、とても無理がなく、ふだん私が考えていることとも一致するのでご紹介したいと思います。
彼の名前は、松本直之さん。
2005年の春から愛知県・豊田市の山の中で自然農をされて10年以上。完全無農薬の野菜を栽培していて、その種類も多く、年間で60品目以上もの野菜の中からその季節に採れた旬の野菜たちを販売しています。
松本さんが農業について学んだのは、(財)自然農法国際研究開発センターで受講した8ヶ月間の研修だけ。それ以前は農業とは全く関係のない仕事をしていたそうです。農業について全く知らない新参者だからこそ、古い考えや慣習にとらわれず自分の考えに基づいてやってくることができたと始めた当時を回想されます。
農園では農薬・除草剤・化学肥料は完全不使用。使わない方が健康で丈夫なおいしい野菜になる、「使ってはいけない」ではなく「使う必要がない」が農園のモットー。
子どもたちが安心して食べられるように、美味しいと言って食べてもらえるように、そして食卓が楽しい空気に包まれるように、そんな願いを込めて野菜を届けています。
一般的な話をすれば、農薬は科学的に安全であると証明されているものだから、使用基準を守って使うのであれば、一応、消費者の安全は保障されています。すべての人が使って安全というわけではありませんが、ほとんどの人にとっては安全性が確認されている基準が定められているのです。
しかし、まったく危険はないのかといえばゼロではありませんし、現在、ネオニコチノイド系農薬のように問題になっているものも確かにあります。それでも、技術の進歩により、過去の農薬に比べれば安全性がさらに高まっていくことは確実です。健康被害を多く生んだ過去の農薬を例に挙げて危険と判断するのはどうかと思いますし、農薬にまだ問題が残っているからといって将来的にもずっと使用を否定するのも違うと思います。
ふつうに暮らしている日本人にとって、国産の農産物を食べる分には、農薬からの危険はほとんどないと考えても良い。しかし、このままで良いかといえば、そうではない。そこに有機栽培だとか自然農法が存在する理由があります。
けれど、農薬=悪という構図で、農薬をネガティヴに捉える活動家や食養家が多い中、松本さんの考えはもっと柔軟で、さらに先を見ています。それがうかがえるのは、彼が農業と医療を重ねて捉えている部分に見て取れます。
まず、農薬を使う目的を考えた場合、次の2つがあります。
●病気を抑え、発生を予防する
●虫がつかないように防御する
病気になったら薬をかけて治す。もしくは、病気にならないように予防として薬をかけておく。また、野菜に虫が発生したら殺す。もしくは、野菜に虫が付かないように薬で防ぐ。このことそのものは、それほど否定されるものではないと松本さんは言います。
野菜からすれば、病気になってもなにもしてくれない栽培者よりも、あれこれ手を尽くし大切に育ててくれる栽培者のほうがありがたいだろうし、野菜にとってはうれしいという見方が出来ると考えるのです。そんな松本さんの面白いところは、農業と医療を重ねて見ています。
以下、松本さんのサイトから一部抜粋〜
これは人に例えてみると納得できます。野菜を人に置き換えて考えてみます。病気になったら薬を飲んで治す。
病気にならないように予防接種を受ける。といったことで人は薬に頼って生きています。
蚊やブヨが飛んできて血を吸おうとしてきたらパチンとたたいて殺してしまう。
蚊が寄ってこないように虫除けスプレーを体にかけて寄りつかないようにブロックする。
よくやりますよね。自分は病気になったら処方された薬を飲むのに、野菜が病気にかかってもなにもしないで放っておくほうがいいですか?
自分は蚊がいやだから殺してしまう、防虫スプレーを体にかけるのに、野菜に農薬をかけることはダメですか?農薬を毛嫌いする気持ちはわからなくもないですし、私自身も農薬には相当な嫌悪感をもっていた時期がありました。でも、このように人に置き換えて考えてみると、農薬を使わないという選択にはどこか野菜に対して冷たい感情が含まれているように感じませんか?
病気にかかっているのに何もしないなんて・・・。虫にやられるのがわかっているのに何もしないなんて・・・。ある意味では虐待。無農薬栽培ってなんて無慈悲なの。そのようにとらえることも、できなくはないです。
無農薬で育てる意義とメリット
病気や虫に対しての、人と野菜での対応の違いを比べてみると、無農薬で育てることにすこし抵抗を感じられるかもしれません。ですが、無農薬であることの意義は別のところに存在します。人と野菜の健康を考えるうえで決定的な違いがあります。
それは。健康じゃない個体の扱い、です。
人であれば、病気にかかったら早く治して元気になりたいと思うし、病気にかかりたくないと思えば予防接種をすることもあります。表面上なんとなく元気そうに見えるだけでじつは病気がちで不健康だったとしても、100人いれば100人すべてが元気に生きたいと思っているはずです。社会もそのように動いています。
これを野菜で考えると。表面上なんとなく元気そうに見えるだけでじつは病気がちで不健康だったとしても、農薬をかけることで100すべての野菜が元気に育っているように見えるということ。農薬をかけることで100%すべてを生かそうとします。でも内情は違います。
本当は消えてなくなるべき不健康な野菜も、無理やり生き残らせている状態。健康ではないものを健康なように見せて、とりつくろって100%の収穫を目指そうとするのが農薬を使った栽培です。無農薬で育てようとすることは、健康ではないものを排除しようとする行為なんです。
農薬が使えなければ・・・。病気にかかって死んでしまうものもある。虫に食われて被害をこうむるものもある。
100すべての野菜を生かすのではなく、なんらかの理由によって病気になったり虫に食われたりしたものをそのまま自然淘汰してしまうんです。不健康なものは排除していくんです。そうすることで薬に頼らないでも健康に生き残っているものだけが収穫されるようになります。食卓には健康なものだけが届けられます。
無農薬で育てることの意義は、健康なものと不健康なものを選別するところにあるんです。だから。無農薬で育てることで病気がちな野菜が収穫されるのを防ぐことができる。健康な野菜だけをお届けすることができる。といったメリットが無農薬栽培にはある、とも言えます。もちろん、農薬が悪いわけじゃありませんよ。農薬は素晴らしいものだしなくてはならないものだと思います。
けれども本当に健康な野菜を食べたいと思っている人にとっては、表面的に健康に見えるだけのなんちゃって野菜に当たりたくない。それだけのことです。
・・・いかがでしたか?
とても考え方が自然で無理がないという印象を受けませんでしたか?
松本さんのメッセージは農薬を全面的に否定するのではなく、もっと先を見据えて、新しい農業のカタチを創造していきたいという意思に溢れているように感じました。こんな作り手の栽培するお野菜は、あなたも一度食べてみたいと思われるのではないでしょうか?
この頃は私の暮らすこの北海道にも、そうした新しい考えを持った自然農法家が多数いらっしゃいます。私たちのオーガニックカフェでも、そうした生産者さんたちの協力を得て、食材を提供させていただいています。日ごろ、お取引させていただいている生産者さんをずらりご紹介したいと思います。
●まほろば農園さん
●稲葉ファームさん
●メノビレッジさん
●中つ地農園さん
●岩本農園さん
●ラララファームさん
私たち消費者は、ただ食べるだけでなく、食料を提供してくださっている生産者さんとも交流し、その考え方や生き方に触れ、活動をサポートさせていただく意識を持つことが大切だと感じています。
ただ食べるだけの立場から農薬を批判するのは簡単ですが、生産者さんの立場からすると、様々な考えや、使用するしないの方法論があります。私たちがそれらをもっと知って、理解を深めていくことは、これからの日本の農業や、私たち自身の食生活を変えていく大きな力となるのです。
今回、松本さんの考えに触れ、私もそうした気づきをいただきました。皆さんは、どのように考えられますか?
それでも、できるだけ農薬を避けたいという方は多いはず。次回は、そういう方のために、農薬を使った野菜でもそれを落として安心して食べられる処理の仕方についてお伝えしたいと思います。お楽しみに。
●農薬の目的や役割 松本農園 松本直之さんのお話
⭐️ 今、脱サラして農業を始める人が増えています。会社員をしていたからこそわかる従来の農業の問題点。それを改善することで安心、安全、しかも美味しい野菜を提供してくださる生産者さんが続々誕生しています。著者の西田さんもそうした成功者のお一人。日本の農業にはまだまだ可能性がある!未来がある!そうした希望を感じさせてくれます。
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