えっ!頭の中にカビが生える?

菌類の世界

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私たち人間の暮らしは、様々な生き物たちに囲まれ、つながりを持って営まれています。犬、猫などのペットや牛、馬などの家畜を含め、細菌や微生物など目に見えぬ生き物までを含めるとその数は計り知れません。

今回、テーマに選んだ「カビ」も、そうした人間の暮らしに関わる生き物の一つ。コウジカビみたいに麹として味噌や醤油、日本酒を作るために用いられる有用なカビもありながら、コウジカビと同じグループに分類されるカビが人間の肺にびっしり生え、病をもたらすこともあります。

人間に悪さをするカビといえば、この他にも皮膚など体の表面にとりつく水虫(白癬菌)や臓器に感染するカンジダなどが知られています。しかし、本来はどれも免疫力が非常に低い状態の人にしか感染しないのが特徴。

ところが、この日本において唯一、健康な人でも時に冒されるカビというのがあるのです。

 





 

■今、カビによる感染が増えています■

私たちは、病気などによって抵抗力が弱ってしまっている時など、ふだんの健康なカラダだったら病気を起こすことがないような弱い細菌でも、感染して病気になってしうことがあります。

このようにして起こる病気を「日和見感染(ひよりみかんせん)」と言いますが、何もこれは細菌だけの話に限ったことではありません。カビが人間のカラダの中で繁殖して病気を起こすのも、この日和見感染なのです。

ただでさえ病気で体が弱っているところに、カビが悪さをしてさらに打撃を与え、重症化させます。内臓はじめ、それはカラダ中に広がり、時には脳まで侵して死を招くことさえあります。

現在、カビによる日和見感染症は、年々増え続ける傾向にあります。

医学の進歩によりこれまでは治療が困難だった病気も新しい医療技術で治すことができるようになりましたが、その反面、抗ガン剤やステロイドホルモン剤、臓器移植に欠かせない免疫抑制剤などは、人間の免疫力を極端に低下させてしまい、カビによる日和見感染のリスクを急激に増やしてしまったのです。

 

■誰もが感染する恐れのあるカビ■

そうしたことも要因としてあるのでしょう。健康な人でも時に冒されるカビというのがあるのをご存知ですか?

ハトの糞に存在することの多いカビで「クリプトコッカス・ネオフォルマンス」という舌を噛みそうな名を持つものがあります。

クリプトコッカスというカビ(真菌)は、ハトなど鳥類の糞で汚染された土の中に生息します。このクリプトコッカスを含んだ土ぼこりを吸いこむことで発症します。 老人や細胞性免疫異常を有する免疫力の弱った乳幼児などは特に発症しやすくなります。

 

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●クリプトコッカス・ネオフォルマンス

 

このカビの仲間が作りだす毒であるアフラトキシンを食品から摂取するのも大変危険で、その毒性はフグ毒より強く、急性肝炎や肝臓ガンの原因にもなります。

かつてインドではこのアフラトキシンによって一度に100人以上の死者を出した記録もあり、輸入ナッツ類から検出されることが多いことから、日本でも検疫では非常に厳しいチェックを受けているようです。

 

■頭の中に生えるカビ?■

ふつう、カビは皮膚などカラダの表面にとりつく水虫=白癬菌のようなものが一般的ですが、クリプトコッカスの場合は、カラダの表面のみならず、吸い込んだ胞子が肺の中で成長し、増殖すると発熱や咳、血痰などの症状を引き起こします。さらには恐ろしいことに3~5割の確率で脳に入り込み、マヒ、震え、痛みなど、髄膜炎や脳炎の症状を起こす恐れもあり、もしクリプトコッカス症に感染してしまった場合の患者の致命率は約12%だそうです。

よく、大事なことを思い出せなかったり、忘れたりした時に「頭の中にカビが生えた」なんて冗談を言ったりすることがありますが、なんとリアルにあることなんです!

ただ、ハトの糞にこのカビの胞子が入っていたとしても、それを吸い込んだ全員が必ずしも感染するわけではないようですのでご安心ください。なので、くれぐれも鳩を目の仇にすることのないように。

ただ君子危うきに近寄らずで、むやみやたらにハトにエサをやらない、またハトのフンを触らないくらいの注意は必要です。

 

■もっと恐ろしいカビ、アスペルギルス■

実は危険度だけで言えば、クリプトコッカス以上に恐ろしいカビがいくつかあります。その一つがアルペルギルス

このカビは、肺結核などでできた肺の空洞に侵入してさらに繁殖し、結核によく似た症状を引き起こします。抗生物質でさえ全く効果がなく、手術で病巣を取り除いたり、内視鏡で薬剤を直接注入する必要があります。

白血病や臓器移植などにより免疫機能が低下している場合には、ほんの少しのアルペルギルスによって、さまざまな臓器に問題が生じ、やはり最終的には菌が脳に達し、突然の発熱や激しい頭痛、めまい、嘔吐を繰り返していきながら病状が急激に悪化、一週間で死に至ることもあります。

病気などによって抵抗力が弱ってしまっている時は特に危険です。病気でカラダが弱っているところへ、さらにカビが悪さをしてダブルパンチの打撃を与え、重症化させるのです。

 

■人間はカビと共生して健康を維持する存在です■

冒頭で述べたように、カビによる感染症は年々増え続けています。医学の進歩によりこれまでは治療が困難だった病気も、新しい医療技術で治すことができるようになりました。しかし、その反面、現状の医療では抗ガン剤やステロイドホルモン剤、免疫抑制剤などカラダの免疫力を極端に低下させてしまう薬剤を使用しなければなりません。これらがカビによる感染のリスクを急激に増やしてしまったのも事実です。

また、過度に清潔であることを意識して巷に溢れかえる抗菌グッズ。もともと人間のカラダには、健康を守るための微生物も棲み着いています。その微生物の中にはカビも含まれ、それらが、好ましくない微生物の発育を防いでくれているのです。

ところが抗菌グッズを使ったり、手やカラダを洗いすぎると、皮膚表面で健康を守ってくれている良いカビまでも洗い流してしまい、皮膚の常在菌群のバランスを崩し、皮膚トラブルや免疫低下をもたらしてしまいます。

人間は本来、カビなどの菌とも共存しながら強くなり、健康を維持している存在です。もっと菌について知ることは、人間を知ることにもつながるような気がします。ハトの糞には十分注意しながら、もっと菌を身近に感じたいと思います。

 

⭐️ 地球上でもっとも未知な生き物、それは菌類です。その理由は菌類が目に見えないほど小さいから。私たちが知っている菌類は全体のわずか1~20%にしか過ぎません。彼らを知って仲良く付き合っていくためのこれは格好のバイブルです!

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