砂糖と油ものの酸化食が問題児を生み出す

脳の健康を保つために

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食生活が人間の健康のみならず、メンタル面にも影響を与えることを否定する人はまずいないと思います。

なぜならば、私たちのカラダも心も、毎日口にする食べ物や飲み物がその原料となってつくられるのですから。

広島県福山市立女子短期大学に鈴木雅子先生という教授がいらっしゃいます。鈴木先生は、中学生を対象にした食生活に関する調査をもう20年以上にもわたって続けられています。そもそものきっかけは彼女が中学校の養護教諭だった時の教え子たちから「最近、生徒たちの様子がどうもおかしい」と聞かされたこと。

詳しく尋ねてみると、生徒たちの多くが授業中も注意力散漫でいつもイライラしていると言うのです。また常に疲労感を訴え、風邪も引きやすい。鈴木先生は「食事が関係しているのではないか」と考えて、86年に広島県福山市と尾道市の中学生1169人を対象にアンケートを実施しました。

その結果、わかったことは、食事状態が悪くなった子供ほど、毎日の生活に不快な気分や症状をともなうということでした。さて、その不快な気分や症状とは一体どのようなものなのでしょうか?

 





 

■アンケート結果が示す食事の大切さ■

中学生1169人を対象にしたアンケートでは、食生活の内容を5段階で評価し、数字が小さくなるほど食生活に問題があるとしました。その結果わかったのは、食事の状態が悪い子供ほど次のような気分や症状を訴える子供が多いということ。

 

●すぐカッとなる

●根気なく飽きっぽい

●集中力がなくいつもぼーっとしている

●学校に行きたがらない

●頭痛を訴えたり、めまいがする

 

アンケートに答えた全生徒のうち、食事の内容が「5」の最も良い生徒で「すぐカッとなる」と答えた者は25.8%でしたが、それが最も食事の悪い「1」の生徒になると88.5%にまで激増したというのです。しかもこれらの生徒の多くは学校でも問題を起こす子供たちだったのです。

「いじめや不登校、学級崩壊などの問題は、教育制度の面からのみ語られがちですが、生きることの土台である食が崩れていることも大きいと思います」鈴木先生はそう言います。

特に問題なのは、86年の最初の調査以来、子供たちの食生活がさらに悪化していることです。鈴木先生はその後、何度も同じ調査を福山市内で行いました。アンケートでは「毎日必ず朝食を食べますか?」「毎食、色の濃い野菜を食べていますか?」などの質問項目に回答してもらい、それを得点化して5段階に分けているのですが、それを比較すると、最も良い「5」のグループの割合が年々減少しているのです。

 

■問題児のひどすぎる食事内容■

では、鈴木先生がアンケート結果で実感した食事の悪さとは具体的にはどのような内容だったのでしょう?

特に鈴木先生が驚いたのは、男子生徒のうち、食事内容が悪い生徒のグループは全員が「毎日何かしら腹が立っている」と答えたことでした。その食事内容は、例えばある生徒の場合、<朝食はなし。昼食はお菓子とコーラ。間食には菓子パン3個にアイスキャンデー2個。カップラーメン2個とさらに再びコーラ、肉まん3個。そして、夕食はなし>というもの。

こんなケースは特別かと思えば、そうではないらしく、こうした食事がごく日常的に続けられているというのです。これでは高カロリーで高糖質、必要なタンパク質やビタミン、ミネラルが全く含まれていません。

ちなみにこの生徒は14歳で、学校では机をカッターで切り刻む、屋上から下を歩いている生徒に唾を引っ掛ける、パンを食べながら他の生徒の卵焼きやウインナーを横取りして食べる、そして、授業中は教室を抜け出し奇声を発する、頭痛、腹痛、吐き気を訴えては保健室に駆け込むという手のつけられない問題児。

鈴木先生は、「この子の心身の健康状態は明らかに人間が必要とする食べ物を食べさせてもらえていない弊害が表れている」と言います。確かにこれは、この子自身というよりも親の責任でしょう。どういう事情で先のような食事しか与えられないのかはわからないけれど、あまりにこの子の親は食事と心身との関係に無関心と思わざるをえません。これでは子供そのものに関心がないと言われても仕方がないでしょう。

 

■還元食と酸化食■

私たちの食べ物は大きく分けると2つあります。それは「酸化食」と「還元食」

酸化食とは、過酸化脂質や砂糖を多く含むもの。例をあげれば、フライドチキンやフライドポテトなどの揚げ物やインスタントラーメン、ドーナツ、菓子パン、清涼飲料水など、こうした酸化食は体調のみならず、「脳」にも影響を及ぼします。

考えてみればこれらはすべてコンビニエンスストアで手にはいる人気商品ばかりですよね。店内で過酸化脂質や砂糖を含まない食品を探すのに苦労するくらいです。それほどまでに私たち現代人の食事はすでに油漬け、砂糖漬けなのです。

 

脳の血管壁にはリノール酸が多く含まれます。そのリノール酸は結合状態が二重になっているのですが、過酸化脂質が入ってくると酸化反応が進んで、この二重結合がはがれ落ちてしまうのです。結果、正常な判断が行えなくなってしまいます。またこれら酸化食にはボケを促進し、認知症に向けての進行を早めてしまうこともわかっています。

逆に還元食は、こうした酸化食が脳に及ぼす酸化反応を元に戻してくれるのです。例をあげれば昔の日本食。穀物を中心に海産物や野菜を多く含んだ食事で、これらには大脳を酸化させるものは極めて少ないのです。

ふつうに生活していても、空気中には活性酸素があるので酸化反応を完全に防ぐことはできませんが、その反応を最小限に防いでくれるのが緑黄色野菜に含まれるカロチンやSOD酵素という還元酵素で、これらは豆や穀物の中にも含まれます。緑黄色野菜やバランスの良い食事が大切ということは、「酸化を防ぎ、還元に戻す」という大切な意味があったのです。

私たちの脳は大量の油脂成分を含んでいます。還元食を多く摂っていると、脳の油脂成分の酸化反応も起こりにくいのです。ということは常にフレッシュな状態でいられるということです。

前述した生徒の食事はまさに酸化食。これでは正常な判断は望めません。子供さんの明るい未来のためにも一家をあげて日常食の還元食化に取り組んでいただきたいものです。

 

■ビタミンB群もお忘れなく!■

酸化食、還元食に加えて、子供たちの脳の健康を考える上でもう一つ覚えておきたいのはビタミンB群について。ビタミンB群は必須栄養素として知られていますが、動物に長期間にわたって意図的にビタミンB群を含まない食事を与え続けると、脳の一部に変性が起こって大量の乳酸の蓄積が起こることがわかっています。

またそれだけではなく、B1が不足した場合には、神経ホルモン作用を持つアセチルコリンが少なくなったり、脳の働きが鈍くなったり、すぐにカッとしやすくなるのです。

脳細胞というのは、筋肉細胞と同じでブドウ糖を取り込んでそれを燃焼してエネルギーに変えていくのですが、その時にビタミンB1、B2、B6、B12、ナイアシンといったビタミンB群が全部そろっている時に最もよく完全燃焼してくれるのです。このブドウ糖がよく燃えてくれないと、燃え残りの乳酸が脳の中に大量に溜まってしまい、ちょっとしたことでも動揺しやすくなったり、誇大妄想に浸りやすくなったり、気が短くなったり、物忘れが激しくなったりするのです。

このようなビタミンB群の不足した食事が何かといえば、子供たちが大好きなインスタントラーメン、糖分の多いお菓子、清涼飲料水、アイスクリーム、スナック菓子、白米、白パン、パスタなど。これらはすべて先にあげた酸化食とも重なります。子供たちの欲するままにこれらを与え続ければ、当然脳はやられてしまい問題児のできあがりというわけです。

 

■朝食を食べない子供と進む孤食化■

鈴木先生曰く、

「朝食を食べない中学生は、約2割に達しています。きっと高校生になると、もっとこの割合は増加するでしょうね。また、主食と副食のバランスの取れた食事をする生徒も減っています。朝食を食べたという生徒でも、食事内容を聞いてみるとチョコレート1枚ということも珍しくありません。親が子供の欲しがるものを与えていて、孤食化がそれに拍車をかけています。祖父母と同居している場合でも、ご飯は食べないというケースが増えています。かつての日本人の家族の食卓とはかけ離れたものになってきています」

保護者に書き出してもらった1週間の食事内容を確認すると、カレーやチャーハン、野菜炒めなど、一見バラエティーに富んだように見えるメニューも実は調理法が異なるだけで全部同じ食材を使っているため、幅広い栄養素を摂取できているとは言えません。また、根菜類や豆類、海藻類、魚などが全く食卓に上らない家庭も多いのです。

 

公立中学校に勤めるある教諭は、宿泊研修での夕食時間にあぜんとさせられる光景に出くわしました。生徒たちがテーブルに向かい合いながら食事をしていたのですが、それぞれの生徒の前には、ご飯と副食、汁物が並べられています。ところが、何人かの生徒が隣の生徒の皿に盛られた肉が気になり、勝手に取り上げて食べ始めたのです。取られた生徒は気が弱いせいか、情けなさそうな顔をしたまま抵抗できません。

教諭はその生徒たちを注意しながら、「これが今の子供たちの暮らしぶりなのか」と驚きました。

一人っ子が多く、両親が仕事などで忙しいため、たった一人で食べる「孤食」が増えているせいか、まず他人と食卓を囲む上でのマナーが身についていないのです。他の生徒のおかずを横取りした生徒だって決して食事の量が足りなかったわけではありません。その証拠に生徒の皿にはたくさんの野菜類が残っています。好きなものは他人の分まで食べても、嫌いなものは食べない。その日、生徒たちの夕食の残飯は目を覆うほどの量になりました。

生徒たちに訊けば、ある生徒は、もう何年も朝ご飯を食べたことがないと言っていました。時々朝食抜きという生徒はざらです。原因は就寝時間の遅さにあるらしく、元気のない生徒に「昨夜、何時まで起きていたか?」と問えば、1時とか2時という答えが返ってきます。ゲームやスマホを深夜までしているのが理由です。当然、朝はぎりぎりまで寝ているため、朝食を取る余裕はありません。

学校には登校時間間際に駆け込み、先生が挨拶をしても不愉快そうな顔が返ってくるだけです。授業が始まっても午前中はずっとけだるそうな表情をしています。

鈴木先生は、子供たちに何をどう食べれば良いかを教える「食育」の授業を学校教育の中にも直ちに加えるべきだと主張します。従来の生活指導では服装や頭髪など生活の外側だけが対象となっていました。しかし、これではいつまでも対症療法で根本が変わりません。子供たち自身に「食」を通じて自らの生活を振り返らせるような機会を少しでも多く用意する必要があると訴えます。

 

■暴力行為の原因は「食」にもある■

全体的に子供に対する関心が薄い家庭の子供ほど、家族そろって食べる回数が少なく、食事の質が悪く、コンビニ食が常態化し、脳の健康に必要な栄養素が摂れていないことがわかります。それでは、しつけや教育といったこと以前に人間の生物的基盤が危ういと言っても言い過ぎではありません。

 

98年1月に栃木県黒磯市で発生した「バタフライ・ナイフ殺人事件」を覚えていますか?

ある中学校で授業中に席を立ち、教室の外へ出ようとした生徒に「トイレなら、先生に言ってから行きなさい」と女性教師が注意した瞬間、その生徒は隠し持っていたナイフで教師の首目がけて一突き、その後さらにめった刺したあげく、血の海の中、虫の息の26歳教諭のカラダを何かに取り憑かれたようにして蹴り続けました。この少年はなんと中一で12歳。

その後、日本全国でせきを切ったようにして少年によるナイフ事件が続発しました。ふだんは無口で目立たない。そんな子が、突然ナイフを突き立てる。いわゆる「キレる少年」が増えています。

鈴木先生が行ったアンケート調査でも「食生活といじめ・暴力性」の関係は明らかでした。いじめに関わっている生徒の率も、やはり食生活の内容が悪くなるほど高かったのです。鈴木先生はゆすりの常習犯で暴力的ですぐカッとなって問題を起こすある14歳の少年に食生活の面で指導をしました。

少年の1日の食生活を調べたところ、朝食は食べず、昼食は菓子パンにジュース、夕食は焼きそばにラーメン、カレーライス、間食にはジュース8本、コーヒー2杯、板チョコ2枚、清涼飲料水2本というものでした。しかも、家族そろって食事をするのが稀な家庭環境にありました。

鈴木先生は少年に、長期間大量に清涼飲料水を与えたハツカネズミの骨が細くなってしまった写真を見せたところ、少年は「先生、わしの骨もこうなっとるのかなあ?」と質問しました。

鈴木先生は「ちょっとはなっていると思うよ。でも、君はまだ若いから今やめたら大丈夫だよ。すぐに太くなってくるよ。君のカラダがだるいのも毎日ジュースを飲みすぎているからよ。それだってきっとやめれば良くなるよ」と答えました。

それからしばらくして少年の食事は変わっていき、「だるい、疲れた」と言わなくなり、ゆすりや暴力事件を起こさない生徒に変わっていったのです。

 

■問題児は大人が生み出すもの■

こうしてみていくと、いじめや暴力事件など、子供の攻撃的行動の発生要因への理解と行動改善のためには、食生活にも目を向けなければならないことがわかります。

いじめ、不登校、キレる子、学級崩壊、学習意欲の低下・・・現在、子供たちの異常行動が大きな社会問題となっていますが、もともと子供自身に原因があるケースはごく少数です。その多くは家庭環境、つまりは親の側に原因があるようです。子供に無関心だったり、十分な食事を提供できていなかったり、心の結びつきや交流がなされていなかったり・・・。

もともとこの世に問題児として生まれてくる子などいないのではないか?

問題児というのは大人の不理解と認識不足により「生み出される」ものなのではないか?

子供が成人するまではすべて親の責任。食と子供の異常行動との関係について深く知れば知るほど、私はそうした気持ちを強くします。現在の社会はすべて私たち人間が創り出してきたもの。もし、現在の社会の姿が真に望んだものでないのだとすれば、私たちには自らの手でそのカタチを変えていく責任があります。

「食」は今すぐにでも、誰もが着手できる最も身近な問題の一つです。

「今日からの食事を酸化食から還元食に変えよう!」そう意識することだって立派な革命への第一歩となります。この世から「問題児」という言葉をなくすためにも、大人である私たちが目の前の食事を、そして食卓を囲む家族のカタチを今一度見つめ直してみようではありませんか。

 

 

⭐️ この本の面白いところは著者が辻学園調理専門学校卒業の40年にわたるフードビジネスのプロであること。生産者と消費者をつなぐ地産地消をビジネス化し、食育の実践及び総合プロデュースの大家であること。身近に起きている食に関する教えを27のヒントでわかりやすく解説。この食育のバイブルで今日からあなたも食育講師!

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