子供の頃の「食事」というものは、ヒトが成長していく上で大切な意味を持ちます。カラダがしっかり出来上がるまでの栄養を日々摂り込んで、「食」についての知識や考えを養う基礎をつくります。その主たる現場となるのが「家庭」と「学校」。
家庭において食事をコントロールすることは可能なのですが、学校となるとなかなかそうはいきません。もし、その学校で提供される給食に、子供たちの「安全」を脅かす困った問題が含まれているとしたならどうでしょう?
今回はそんな学校給食の問題点についてお話してみたいと思います。
現在、私たちの窺い知れぬところで食品汚染が静かに広がっています。それは学校給食とて例外ではありません。子供たちが、親の手の届かないところで食べる食事。親は安全と安心を前提に子供を学校に預け、「カラダをつくる」という人間の重要なプロセスを任せています。その学校の給食の実態は一体どのようになっているのでしょうか?
ここ数年、ノロウィルスによる集団食中毒が学校給食を襲っています。2014年、浜松市内の小学校で患者数1,271名の大規模食中毒が発生しました。原因は学校給食で提供された食パンと断定され、病因物質としてノロウイルスが検出されました。浜松市内では患者数が過去最多、静岡県内でも過去3番目に多い事例となりました。
また、以前問題になった食品偽装も学校給食と無関係ではありません。食肉卸売業者ミートホープの偽装牛肉ミンチが学校給食にも納入されていたのはまだ記憶に新しいところですし、農薬が混入しているとして事件になった中国産冷凍食品だって各地の学校の給食メニューになっていました。
なぜ、こうしたことが起こるのか?それは現在の学校給食のシステムによるものが大きいと思います。学校給食は、「効率化」「経費削減」の名の下に、民間委託、大規模化が急ピッチで進められてきた事業のひとつで、当然のことながら、献立は原価の安い輸入冷凍食品や半加工品に頼らざるを得なくなるわけです。子供の健康よりもいかにコストを下げるかについて躍起になっているのが多くの給食をつくる現場の実態なのです。
学校給食は、日本人であれば誰もが一度はお世話になったことがあるでしょう。でも意外とその歴史は知らぬもの。で、調べてみました。
日本の給食は、明治22年に山形県鶴岡鶴岡市の私立忠愛小学校が導入してから始まりました。当時は、家が貧しくてお弁当を持ってこられない子供がたくさんいたので、この小学校を建てたお坊さんが、おにぎり・焼き魚・漬け物といった昼食を出し、みんな大喜びで食べたそうです。それから給食が子供たちにとって大変良いものだと認められて少しずつ日本中に広がっていきました。
しかし、戦争が始まって、昭和16年頃から食べるものが不足するようになり、一時給食も中断します。昭和20年に戦争は終わりましたが、食糧不足は続いていて、その頃の小学6年生の子供のカラダは現在の4年生と同じくらいだったと言います。
昭和22年に全国の児童約300万人を対象にした学校給食が始まります。そこではアメリカから無償で与えられた脱脂粉乳が使われ始め、その後、ユニセフからの脱脂粉乳の寄贈を受けます。昭和25年、アメリカからの小麦粉を使った8大都市の小学生児童対象の完全給食が実施され、昭和27年には小麦粉に対する半額国庫補助が開始され、全国すべての小学校を対象に完全給食が始まりました。
その後は、アメリカの指導のもとコッペパンに代表される小麦と牛乳を使った西洋風の給食が主流を占める時代が長く続きます。その後、見直しが図られ、昭和51年から米飯給食が開始されました。戦後の日本の食料政策は、学校給食も含め、長くアメリカの政治的背景の下で行われてきました。現在の給食もこうした国の政治的・経済的思惑に絡む部分があるのは明らかです。
今から10年前の話ですが、捕鯨の町として知られる和歌山県太地町で、水揚げされたゴンドウクジラから厚生省が定める規制値の10倍以上の水銀が検出され、それと同種のクジラ肉が保育所や小中学校の給食で、全町の子供たちに与えられていたことがわかりました。
翌年、その事実を受けて、議会ではゴンドウクジラの肉を給食に出すのを禁止するよう求めたのですが、ついに町長は「中止にする」とは断言しませんでした。町おこしの目玉としてクジラを利用することを考えていたのに、今さら中止するわけにはいかないというわけです。
議会の議題にのぼった時点で、水銀汚染が明らかだったにもかかわらず、町は検査もせず、残っていた45キロのクジラ肉をその後2か月間給食に出し続けたのです。子供たちの親からの批判を受けて、現在は給食には出されていませんが、スーパーでは同じクジラ肉が売られていると言います。子供たちの健康被害は出ずに済みましたが、出てからでは遅いのです。
子供の健康を脅かしては、町おこしも何もあったものではありません。今の給食には健康よりも優先されるコトがあるのです。それは、いつだって「政治」と「経済」です。
過去に食品偽装で有名になったミートホープの食肉製品も、異常な安さで全国22都道府県の学校給食で使用されていました。ミートホープ従業員はサルモネラ菌が検出されたハムやソーセージもデータを改ざんして給食センターに納入していたことを認めています。
ミートホープの偽装牛肉ミンチは、大消費地・横浜市の学校給食にも使われていたことが明らかになりましたが、同年、すでに横浜市の学校給食には中国産キクラゲから基準値の2倍の殺虫剤フェンプロパトリン(発がん性あり)が検出されて、市の教育委員会では今後、中国産のキクラゲを使用しないことが決定されました。
しかし、現在、中国産食材で禁止されているのはキクラゲの一品だけ。市の学校給食の食材で中国産がどれくらいのシェアを占めているのかは、実際のところわからないままです。
文科省によれば、学校給食費の平均は、小学校で月額4130円(平成22年調べ)。1食あたりで計算すれば、約220円。これが少年鑑別所の場合は260円となり、意外にも学校給食よりも法を犯した少年たちの方が優遇されているという結果になるのです。
私は何も少年鑑別所の食費を下げるべきと主張したいわけではありませんが、普通学校の子供たちと鑑別所の子供たちで食費が異なるのはおかしい。青少年の健康維持・増進のためにはこうした格差をなくし、どの子供たちにも等しく良質な食物を与えることができるよう整備していく必要があると思うのです。
全国の学校給食の中には、地産地消を心がけ、加工食品を使用せず、自室の給食室で手作りしている素晴らしい学校もあるにはあるのですが、そうした学校はまだ少数派です。
現在は給食の民間委託化がどんどん進み、何万人もの給食を一度に作り、各学校に配送する「給食センター方式」の方向へと向かっています。その内容はちまたのファストフードの食事とあまり変わらないという指摘もあります。
コストを抑えるため、中国野菜や加工品を使うのは当たり前。また、食べ残しを防ぐために子供たちの好きな献立を出す傾向があり、焼きそば、鳥の唐揚げ、ハンバーグ、カレーなどに偏りがち。これでは栄養的にも問題があると言わざるをえません。
しかし、これは学校や行政側だけの問題ではありません。2012年にパルシステム生活協同組合連合会が親を対象に行った学校給食についての調査で、「給食費は月額いくらだと適切か?」とアンケートしたところ、「適切な月額は3500円」と答える親が多かったのです。これでは今以上に給食にかかるコストを下げる必要があり、学校や業者ばかりを批判することはできないと感じました。
色々な面でメリットの多い学校給食ではありますが、今一度、その意味と役割について問い直す必要があるように感じています。私は、「食物」は単に生命を繋ぐというだけでなく、その生命の質を左右する大切な要素だと考えています。ひいては、食する人の運命や人生にも関わる問題なのです。こう言うと、「何を大げさな」とおっしゃる方もあるかもしれません。しかし、それは事実だと申し上げたいのです。なぜならば・・・
この日本に、こうした現状を打開すべく立ち上がった一人の教育者がいます。
現在、学力低下やいじめ、殺人、自殺など、教育現場での悲しいニュースが流れない日はありません。
「なぜ、非行やいじめが起きるのか?」そんな疑問を持ったその方は、子供たちの生活を徹底的に調査しました。その結果、わかったのは食事に大きな原因があったこと。問題を持つ子供たちの中で朝食を食べない生徒は30%を越えました。食べたとしてもパンとハム・ウインナー。夕食はカレー、焼肉等で、圧倒的に肉類に偏った食生活が見えてきたのです。
朝食抜きであれば、空腹からの無気力やイライラは当然のことです。しかも、朝食も夕食も肉類が多いのです。魚や野菜が少なく、これで、カルシウムやミネラル、亜鉛など微量の栄養素が不足するのは当然です。それにより血のめぐりが悪くなり、学習に対して無気力になり、自己抑制ができずキレる、非行を起こす、いじめを起こす原因がここにあったのです。
その方は、そうしたことに気がつき、少年たちの食事を根本から改革することを試みました。その結果、驚くべきことが起こったのです!
・・・さて、一体何が起こったのでしょうか?
詳しくは、次回のブログでお伝えしたいと思います。
⭐️ ショッキングなタイトルながら、書かれているコトは皆事実。例えば、農薬を大量に使ってる地域の子どもと農薬を使っていない地域の子供の絵がまるっきり違うのです!農薬を大量に使っている地帯の子どもはヒトを描かせてもまったく形にならない。それは一体なぜなのか?極めて読みやすく、説得力があり、現在、給食を取り巻く事実が浮き彫りにされる一冊です!
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