冬の楽しみ数あれど、中でも寒い晩にゆったりと浸かる薬草風呂ほど心身ともに至福を感じられるものはありません。まだ暖房設備が十分でなかった昔から、私たち日本人の健康対策のひとつとして長く親しまれてきました。
冬は寒さ厳しい季節であるし、空気の乾燥で体調を崩しやすい時期だから、入浴の温浴効果を高めて免疫力向上も期待できる薬草風呂は、風邪の予防にだって大いに役立つ習慣なのです。
今回は、そんな冬の薬草風呂におすすめの代表的な薬用植物をご紹介しましょう。
冬の代表的な野菜といえば何を思い浮かべられますか?
そう、私ならまず「大根」。旬の焼き魚に添えて動物タンパクの毒消しになるだけでなく、風邪をひいたときにすり下ろして飲むことで熱を下げてくれたりもします。
また、大根の葉を使った薬草風呂は、昔からこの国の民間療法のひとつとして役立てられてきました。
大根の葉にはビタミンAやB1、C、カルシウム、ナトリウム、カリウム、鉄などのミネラルをはじめ、温泉成分に含まれる塩化物や硫化イオンなどの無機成分が実に豊富なんです。
これらの作用によって新陳代謝を促し、皮膚のタンパク質と結合して膜をつくり、保温効果を高めるといった働きが期待できます。
最近の研究では、大根を使った薬草風呂に入ると、ふつうのお湯に浸かった場合と比べて発汗量が多く、入浴後もさらに発汗が続き、その後の保温力にも優れていることが分かりました。つまりは湯冷めしにくいというわけです。
薬草風呂には、大根の干した葉(干葉=ひば)を使います。大根一本分の葉を日陰に吊るし、よく乾燥させ、それを細かく刻んで布袋に詰めたものを直接浴槽に入れて水から沸かします。あらかじめ布袋につめた干葉を鍋で煎じて、その煎じ汁と布袋をわいた浴槽に入れる方法もありです。
時おりブームになる食材に「生姜」があります。その優れた薬効は、漢方やインドの伝統医学・アユルヴェーダでも認められ、古来世界各地で人々の健康維持増進に活用されてきました。
生姜のカラダを温め発汗を促す作用は、辛味成分のジンゲロンやショウガオール、精油成分であるジンギベロール、シネオールなどのチカラによるもの。生姜を用いた薬草風呂は、毛細血管の血行を良くし、冷え対策や凝り改善などにも期待できるため、まさにこの季節にはおすすめの薬草風呂と言えるでしょう。
一般には、乾燥させた生姜の葉や茎を布袋に入れ、浴槽で水から沸かす方法を用いますが、生の生姜を使うことも可能です。ひと握り分の皮つき生姜を用意してすり下ろし、その搾り汁を直接浴槽に入れます。またすり下ろしたものを布袋に入れ、そのまま浴槽に入れても構いません。
生姜による保温効果は、足湯や腰湯などの部分浴に取り入れることもできますし、お風呂に入れない時なども、桶やバケツにお湯をはって手軽に始められるが嬉しいです。
大根も生姜ももともとが食材。その安全性からも長く人々に親しまれてきました。
ゆったりと寛げる日本のお風呂文化。
本来の「洗浄」という目的のみならず、ストレスを取ることもでき、さらには血行を良くすることもできる素晴らしいものです。私たち日本人は、世界中で他に類を見ないほどのお風呂好き。
そのお風呂の効果的な入り方は、39度位でゆっくりつかることです。熱いお風呂は表面だけが温まり、すぐに湯冷めをしてしまいます。また、肌の油脂が取れやすくなり、肌荒れや乾燥の原因となってしまいます。
適当な温度を保ち、そこへ今回お伝えした食材を使って薬草風呂にすることで、さらなるお風呂の良き点が増強されるのです。なにより香りも良いですし、忙しい年末だからこそのリラックス効果も期待できますよ。
さて、そうとわかったら、善は急げ!ご近所の八百屋さんに走りましょう。
今夜の晩ごはんのおかずを買うついでに、薬草風呂の材料も忘れずに、ね。
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