サラダごぼうと放射線照射

食と健康

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先日、ごぼうについての記事を書きまして、ごぼうがいかに優れた根菜であるかを力説させて頂いたわけですが、それに絡めて補足しておかねばならないことがひとつあるので、今回はそれをお伝えします。

 

「サラダごぼう」ってご存知ですか?

 

近年、ごぼうの種に放射線を照射して遺伝子に傷をつけると丈が短くなることがわかって、短い新品種というのが生まれました。

その新品種の保護期間が過ぎてしまったことから、再び種に放射線を照射してみたところ、さらに丈が短くなって、おまけにあのごぼう特有のアクまでなくなってしまったんです。食べやすくなって生で食べられるようになり、サラダなんかにも使えちゃうわけです。こうしてできた新品種を再度品種登録したのが「サラダごぼう」なのです。

 


 

■広がる食品への放射線照射■

もともと野菜の固定種というのは、何かと何かが自然交雑してできたものがほとんどです。交雑して変わった形態が出てきたものを何年もかけて作り続けながら固定化していき、それが人手に渡り、また違う土地で栽培され、交雑と気候により変化していき、新しい品種が生まれるのが普通です。

それが、種に放射線を照射することで、交雑する時間も手間も取らずに新品種を作り出せるということで、今、盛んに行われている現状があります。

 

以前からも、殺菌や発芽を抑える目的で世界的に照射は行われてきました。

例えば、ジャガイモやタマネギ、ニンニクに照射すると芽が出なくなり、春先に芽が伸びて食べられなくなったりすることがなくなります。マンゴーなどの熱帯の果物や野菜の熟度を調整したり、イチゴやミカン、魚やソーセージ、ベーコンなどの保存期間を長くすることもできます。また、殺菌についていえば、小麦粉や米などに照射すると、そこに付いていた害虫の遺伝子が破壊され、虫を殺したり、卵を産まないようにすることができます。

 

推進している企業は、「放射線照射により食糧不足が救える、食中毒が予防できる、輸出入が簡単になる、ポストハーベスト(収穫後)農薬や食品添加物が減らせる」と主張します。

照射して菌を殺したり、芽を出さなくするということは、遺伝子を破壊したり、変質させたりするということです。放射線の強力なエネルギーが、原子核の回りをまわる電子を吹き飛ばし、それにより遺伝子の破壊だけでなく、新しい物質が誕生したり、フリーラジカルとよばれる反応性の高い物質ができます。

 

しかし、WHOは、各加盟国での消費者からの不安・批判に答えるため過去の膨大なデータを検討・評価し、1980年以降何回か安全宣言を出し、現在は放射線照射は人体にとって無害としています。

 

■日本では基本、照射を禁じているが・・・■

日本の食品衛生法では、「食品を製造し加工する場合は、食品に放射線を放射してはならない」としていますが実際には、それは単なるタテマエとしかとれません。

なぜなら、もともと国は「原子炉の多目的利用法の開発」の一環として放射線照射の研究がスタートし、1974年に許可を得て、北海道士幌の農協が放射線照射ジャガイモを販売し、現在にいたるからです。

実はこれが世界で最初の照射食品商業利用第1号でした。

色々と文献を調べていく中で、私の暮らす北海道と、道民にとってポピュラーな食材のひとつであるジャガイモが放射線照射食品の歴史の扉を開いたことにショックを受けました。

 

その後は、引き続き照射タマネギが許可される予定でしたが、動物実験で様々な問題が指摘されたため、1978年に原子力委員会が照射ジャガイモを除いた6品目について遺伝的安全性の実験を行うために研究を延長し、そのまま現在にいたるまでジャガイモ以外で許可された食品はありません。

北海道士幌農協の照射ジャガイモは、現在まで30年以上に渡って流通しています。この照射の目的は、春先の発芽防止です。この照射ジャガイモについては、その後、市民団体の調査により、販売開始から10年以上たって公開されたデータで、ラットの実験で体重減少、卵巣重量減少、死亡率増加が起きており、安全性を示す根拠とされたマウスの実験データは実際には存在していなかったそうです。

こうした不安材料の多い放射線照射が食品に対しては禁じられていても、種に対しては品種改良の名の下に平然と続けられているのです。

 

■見えないところで広がる放射線照射食品■

消費者が「便利」を求める中で、こうした釈然としない品種改良や処理が日々行われています。私たち消費者がよほどの意識を持たないことには、こうした情報を知ることはできませんし、国や企業にとって不利益をもたらす事実が大手メディアによって市民に知らされることはありません。

 

現在、食品に対する照射は世界的な潮流となり、最も多く行われている国は中国で、スパイス、乾燥野菜、ニンニクなど年間14万トンの食品に使われ流通しています。その次が米国で、スパイス、牛挽肉、食鳥肉、果実などに年間9万トン位。日本のジャガイモは年間約8千トンということです。

 

食料の半分以上を輸入に頼っている日本にも、照射済み食品が加工されたカタチで入ってきていることは否めません。私たち日本人も放射線照射食品の功罪両面を慎重に考慮しつつ、今後の動向を注視する必要があると考えています。前述したサラダごぼうがそのきっかけになったらと思います。

 

 

 

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