数年前、ネットで、不思議な写真を目にしました。
半透明の衣装ケースの中、
まるで母親の胎内で眠る
胎児のような表情をした少年。
裸の少年からは、
撮影者に対する「静かな信頼感」
のようなものが感じられます。
何が特別どうというわけもないはずのその写真に
私は強く惹かれました。
惹かれた理由を探しながら、
写真について調べてみると・・・
それはアメリカ・サンフランシスコ在住の
ティモシー・アーチボルドという写真家が
自閉症スペクトラム障害である息子の
心の中を知るために、息子のエリヤが5歳になってから
3年間にわたって撮りためた
日記のような作品だとわかりました。
自閉症スペクトラム障害とは、
脳の中枢神経系の機能的障害により、
精神機能の発達に遅れが生じる発達障害の一種です。
人と関わることがうまくできなかったり、
異常と思えるような行動を取ったり、
社会生活でうまく適応できないことがあります。
しかし、エリヤはファインダー越しに父親の目が
自分に向けられていることを知り、それに興味を持ち始め、
撮影に積極的に協力しはじめたといいます。
これらの写真は
「Echolilia/Sometimes I Wonder(エコリリア・時々想う)」
というタイトルの写真集となりました。
裸の写真が多いのは、患者の多くが、
「服は自分を傷つけるもの」として不快に思っており、
裸を好むから。
父のティモシーは、この写真集を公表することで、
一般の人々の「自閉症」に対する理解を深めたい
と思っているようです。
私が感じた、撮影者と被写体の間にある
「静かな信頼感」は、
二人が親子だったからなのですね。
つかずはなれず、けれど、しっかりと寄り添う
「父親の存在感」を作品から感じます。
現在、世界中で精神の病は増えていますが、
それは、あまりに文明の進化の速度が速すぎて、
私たち人間が成長する過程で必要な
そばで寄り添ってくれるものの存在を
失ってしまったからなのではないかと思ったりします。
ちなみにティモシーが写真を撮るようになってから、
エリヤは少しずつ症状が良くなり、
徐々に社会性を身につけつつあるとのことです。
脳=こころの不思議を感じるとともに、
親と子の存在の不思議を感じる好きな作品群です。
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