梅だより改め、私の梅干し物語②

マクロビオティック

-baby

 

 

さて、梅干し大嫌いだった私が、

なぜ、苦手を克服できたのかという話ですが、

 

あれは私が23歳の頃、

マクロビオティック指導家で料理研究家の松本光司先生(故人)が、

ふらっとバンに乗ってわが家に遊びに来られたのです。

 

 

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●松本光司先生

松本光司先生ありがとうございました | 千和子マクロビオティッククッキングスクールブログ
あまりにも突然に、松本光司先生がお亡くなりになられました。今だに信じられない思いです。松本先生は桜澤先生の愛弟子として、和食のプロとして国内だけでなく海外...

 

 

松本先生といえば、マクロの創始者・桜沢如一先生の直弟子で、

日本料理を究められた方。

先生が書かれた『穀菜和食』は、グルマン世界料理本大賞において、

日本代表にノミネートされたこともありました。

 

 

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■信じられないほどの美味しさ・23年モノの梅■

父は古くからの友人で、

先生は度々、ご自宅のある府中から車を運転して

札幌まで遊びに来られることがありました。

 

とてもお元気な方で、

長距離のドライブにもかかわらず全く疲れを見せず、

夜遅くまで様々な興味深い話を聞かせて下さいました。

 

その時、たまたま「梅干しの話」になり、

私が「子供の頃から苦手で食べられないんです」と言うと、

 

先生は、

「ちょっと待っていて。実は面白い梅干しがあるんです」

そうおっしゃって車に戻り、

大切そうに風呂敷に包んだものを抱えて持って来られました。

 

「ところで、あなたは何歳ですか?」

 

私が「23歳です」と答えると、

 

「それは面白い!

偶然、この梅干しも23年前に漬けたものなんです。

同い年ということですね」

 

そうおっしゃって風呂敷の包みを開き始めました。

23年前に漬けられた梅干しということで、

ひからびた梅干しを想像していたのですが、さにあらず。

 

それは、淡いあんずジャムのような色をしていて、

果肉の周囲を半透明のジェル状のものが覆っていました。

 

 

「少し食べてみませんか?」

 

正直気が引けたのですが、

自分と同じ年に誕生した梅干しというものが、

はたしてどんな味がするのか、

その好奇心のほうが嫌悪感よりも勝り、

 

舐めてみて酸っぱければ、食べなければ良い位の気持ちで、

すすめられるがままに、梅干し1個を手のひらにのせ、

その端を小さくちぎり、口元へ運んでみました。

 

舌先に乗せたひとかけらを

口中にぬぐうようにして味わってみれば、

今までに一度も経験したことのない

滋養と旨味に富んだ味覚が口いっぱいに広がり、

さらなる梅を欲して、止めどなく唾液があふれてきます。

 

「これは旨い!」

 

私は思わずそう呟いて、

大嫌いな梅に対して「旨い!」と発した

自分自身にも驚きました。

 

梅干し独特の強烈な酸味は優しい旨味に変わり、

刺すような塩の辛みはすっかり角がとれて

完全に味わい深さへと変化しています。

 

私がこの世に誕生したその年に

松本先生によって漬けられたその梅干し。

この23年間の歳月を、

梅干しは一体どんな思いで過ごしてきたのでしょう。

 

梅干しは塩を用いるゆえ、

保存がきく食品であるということは知っていたものの

これほど年月をおいてもなお、

腐敗しない食品があることにも驚きました。

 

私が母の乳房の先で体験した梅干しは一体何だったのか。

梅干しとはこれほどまでに優しさを含んだ食べ物であったか。

 

その時、目の前の淡い橙色した物体が、

何かとても近しい友人のように思え、

愛おしくて仕方がなくなりました。

 

松本先生は、梅が十数個ほど入った小さな器を私に差し出し、

「はい。これおみやげです。ご家族皆さんで食べて下さい」

そう言って下さいました。

 

先生が帰られてから、梅干しは家族で大切に頂きました。

玄米ごはんに合うのはもちろんのこと、

炊きたての白いごはんにのせて頂いた時のあの美味しさは、

筆舌に尽くし難く、カラダの奥深いところから

「美味しぃーっ!!」という叫び声が

湧き起こってきそうなほどの感動がありました。

 

もし現在、あの梅干しと同じ味のものが手に入るのならば、

私は、一粒3万円でもいとわず購入できる自信があります。

 

その時以来、不思議なことに私の梅干し嫌いは完治し、

どんな時でも美味しく食べられるようになりました。

 

過去に長期で海外を旅したことがありましたが、

梅干しと梅肉エキスは必需品。

それらにどれだけ助けられたことでしょう。

 

梅の実をまったく受け付けなかった空白の23年間を取り戻すかのように

今では、むさぼるようにして食べている私です。

 


 

■梅の効用について■

さて、実はここからが本題。

肝心の梅の効用についてお伝えしたいと思います。

梅

 

梅の成分の特徴は、なんといっても有機酸が豊富なことです。

クエン酸、リンゴ酸、コハク酸などで、

その薬効を挙げれば、疲労回復、殺菌・抗菌、下痢・腹痛

 

また、ビタミン類は、A 、B1 、B2 、Cを含み、

風邪二日酔いにも著効があります。

 

そのほかにも、カルシウム、カリウム、リンなどミネラル類を含み、

本当にバランスのとれた食べ物といえます。

 

とはいうものの、なま梅を薬用に用いるには青酸が含まれるため、

梅肉エキスや梅酒、梅干しなどに加工して利用しなければなりません。

 

中でも梅干し梅肉エキスの効用については、

語りつくせぬ魅力があります。

今回のブログではその辺りをお伝えしたいと思います。

 

 

■夏カゼには梅干しを!■

まずは、梅干しですが、

夏バテ予防や疲労回復にはもちろんのこと、

夏カゼにとてもよく効きます。

 

夏カゼを引くのは、たいてい疲労がたまっている時と、

クーラーや冷たい飲み物でカラダが冷えている時です。

 

こんな時、早めに退治するには、

梅干し、長ネギ、おろしにんにくをトリオで用います。

特に、カゼ熱がある場合、

これらの組み合わせによる発汗解熱作用は効果抜群です!

 

梅干し1個に、長ネギを刻み、おろしにんにくを入れ、

そこに熱々のお湯を注いで一気に飲み干し休むだけ。

 

すると、一時的に汗が出て、その後すっきりし、

たちどころによくなります。

にんにくが苦手という人は、代わりに長ネギを多く入れてみて下さい。

 

早ければ1日、遅くても2日もあれば治り、

カゼを引く前より体調が整います。

 

また、梅干しの黒焼きもカゼの特効薬になります。

梅干し1〜2個をアルミホイルに包み、

ガスの火であぶり、黒焼きにします。

これに熱湯を注いで飲むだけです。

 

 

■梅肉エキスの作り方■

梅の加工品としては、日常の食事では梅干しが主役となりますが、

薬効を考えた場合、梅肉エキスは、最も優れたものです。

作るのは少し面倒なのですが、家庭の常備薬としてぴったりなので、

一度はチャレンジしてみて下さい。作り方は以下の通り。

 

 

①青梅1キロを水洗いしてふきんで水分を拭き取る。

②竹串で梅のへたの部分を取り除く。

③おろし金でおろし、ふきんに包んで包み汁をしぼる。

④しぼり汁を土鍋に入れ、弱火でかき混ぜながら、じっくり煮込む。

⑤煮汁が黒く水飴状になってきたら出来上がり。

⑥清潔な保存ビンに入れておく。

 

 

細菌性の下痢や腹痛には、

梅肉エキスの殺菌・抗菌作用は目覚ましいものがあります。

 

梅干しも冷えからくる腹痛までなら効果がありますが、

激しい腹痛をともなう下痢には効果が弱く、

その点、梅肉エキスはしっかり効いてくれる上、即効性があるのです。

 

方法は、梅肉エキスを0.5g位水に溶いて飲むだけです。

不思議なほどぴたりと良くなります。

 

また、二日酔いの時には肝臓が相当ダメージを受けています。

こんな時にはビタミンCの補給が必要で、

梅肉エキスを先の方法で溶いて飲めば、

肝機能が高まり、新陳代謝が良くなるので、

アルコールが早く抜けてくれるのです。

 

飲み会が続くなんて時には、

お酒を飲む前に梅肉エキスを飲んでおくと、

肝臓の負担がかなり軽くなります。

 

 

・・・いかがでしたか?

梅の持つ素晴らしさが伝わったでしょうか?

 

梅については、まだまだお伝えしたいことが山ほどあるのですが、

今回はこのあたりまで。

 

私自身、こんなに梅びいきな人間になれたことが不思議でなりません。

そのきっかけを作って下さったのは、松本先生とあの奇跡の梅干しでした。

 

先生は残念ながら昨年亡くなられましたが、

今も梅干しを漬ける季節になると、

感謝の気持ちとともに先生のことを思い出します。

 

母が若い頃から続けてきた梅仕事。

それを、現在は妻が引き継ぎ、続けてくれています。

お天気の日を見はからって、ざるに並べた青梅の実を庭に干す妻。

 

その後ろ姿を眺めながら、

日本の梅文化を生み出した先人の知恵と

その思いの深さに打たれます。

 

「ああ、梅干しが食べられるようになって本当に良かった」

 

日本人として生まれてきたことの幸せを感じる瞬間。

そう、それが今。

梅の実の季節なのです。

 

 

 

追記:

梅干しを食べられるようになった私ですが、

グラビアの水着女性のビキニトップ下に

梅肉を想像してしまうクセだけは治りません。

どなたか、治療法をご存知の方はご一報下さい。

 

 

 

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