中国の養生法では、人間も動物なので、冬は冬眠に近い状態で過ごしているといいます。
実際に、四季の中で最もカラダの機能が低下しているのが冬かも知れません。代謝は悪くなるし、夏に比べると気分はふさぎ込みやすくなる。春先は、まだそのモードから完全に抜け出し切れていない感じがします。
しかし、風は暖かくなって気温が上がり、木々は芽吹き、いっせいに花が咲き始めて、自然界はいやおうなく「開始モード」のベルを鳴らし始めます。私たちのカラダもそれに対応して心拍数を上げ、活動を始めねばなりません。すると、血液循環も急激に速まり、内臓においては血液の貯蔵庫である「肝臓」に最も負担がかかります。
陰陽五行においても、春は肝臓の季節と分類されているのには、このような理由があるのです。この時期はお花見や歓送迎会などお酒を飲む機会も多いと思いますが、アルコールを分解するのも肝臓に課せられた仕事なため、量はほどほどにしておいたほうが良いでしょう。また、脂肪の分解も肝臓の仕事ですので、油ものもほどほどに。
中国では、春先の弱った肝臓を助けるために、「ニラ」と「どじょう」を使った料理をよく食べます。ニラにはβカロチンやビタミンAとC、それにミネラル分が豊富でアルコールの解毒に大いに役立ちます。また、どじょうは、弱った肝臓の改善を促します。
野菜では、「春キャベツ」や「大根」がおすすめです。もちろん、これらは年中摂っても良い食品ですが、特に春にその効用が活かされるのです。冬の間にため込んだ余分な脂肪や毒素の解毒に作用しますので、旬の山菜などと合わせて意識してたくさん摂られることをおすすめします。
また、大根は本当に優れた野菜で、細かく刻んだものを生で食べると口の中を殺菌してくれます。さらに大豆のような良質なたんぱく質を合わせて食べるとさらに肝臓機能のアップを期待できます。
春先という季節は、頭の中も混乱しがちです。まだ半分寝ているのに無理矢理起こされ、自律神経がパニックを起こしている感じなのです。日本では木の芽時期になると調子が悪くなるという人が多いですが、中国でも５月はウツになる人が多いので注意が必要な季節と思われているようです。また、春はとかく眠いとかめまいがしやすいという人も多いでしょう。これも自律神経の乱れから起こる症状です。
こうした、不調を改善するのに行われている健康法がありますので、お伝えしますと・・・
朝、目覚めた時に、すぐに起き上がるのではなく、ベッドの中に寝た状態で、両手足でグーパー、グーパーを繰り返すのです。これだけでも脳が刺激を受けて、気分がすっきりしてきます。そして、カラダを起こしたなら、すぐに立たずに、両耳を引っぱったり回したりしてマッサージをします。耳には全身とつながる反射区がありますので、内臓がこの刺激を受けて活動を始めます。時間に余裕があれば、さらに首筋も丁寧にマッサージしてそれからゆっくりと立ち上がります。これを毎日続けるうちに、春の陽気がカラダに取り込まれ、元気になってきます。
また、朝、髪をとかす時も、必ず３０回はブラッシングします。ブラッシングすることで、血液循環を高め、眠っている間にたまってしまった悪い「陰の気」を外に出すことになります。これらを毎朝行うことですっきりと一日をスタートすることができます。
春野菜や山菜が解毒にすぐれ、食べるべき食品であるのは当たり前のことなのですが、食べ過ぎには注意が必要です。いずれもアクの強いものが多いですよね。それらは「毒素」です。冬の間、カラダに蓄積された毒素はかなり強いものなので、それを解毒するには、より強い性質のものが求められます。そこで、春野菜や山菜のアクが有効なのです。「毒をもって毒を制す」というやつですね。
でも、毒であるからには量を越さない注意が必要なのです。でなければ、毒に当たってしまいます。特にタケノコ。食べ過ぎてしまうと、コリンやノイリンという成分が作用してアレルギー症状が出てしまい、鼻炎やぜんそく、アトピーなどの症状が確実に悪化してしまいます。また、リウマチや関節炎、痛みをともなう炎症がある人は痛みが悪化してしまいます。どのくらいでそうなるかは、人により異なりますが、少量を美味しく頂く位のほうが薬になります。
先にあげた、大根やキャベツは通年摂って構わないもの。ニラも時々摂って構わないものなので、それらを知って上手に活用し、爽やかな春を健やかなカラダで楽しみましょう！
★若杉ばあちゃんの食の知恵も漢方と共通点がいっぱい！先人の知恵に学ぶところ大です。
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