五味を食べる

五味

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この頃、日本人の若い人の間では「さしすせそ」が足りなくなっているといいます。この「さしすせそ」って、なんだか分かりますか?

「さ」は砂糖・酒(みりんも指す)。「し」が塩。「す」は酢。「せ」はしょうゆ。「そ」はみそ。

長く日本人の食卓を支えてきた伝統的な調味料が、今、危機に瀕しているというのです。加工食品が増え、それにともない多用される化学調味料や添加物に慣らされ、家庭においても調味料は「○の素」だけ、なんていうお家が増えつつあるというのです。

中国医学では、この「さしすせそ」に匹敵する言葉として「酸甜苦辣鹹」(スァン・ティエン・クー・ラー・シェン)というのがあり、これを称して「五味」といいます。さらにはこれに「麻」(マー)を加えた六つの味が中華料理伝統の味を支えています。

「酸」は酢などの酸っぱい味。「甜」は甘い味。「苦」はニガウリやお茶の渋みなどの苦い味。「辣」は唐辛子やねぎなどのぴりっとした辛み。「鹹」はしょうゆや塩などの塩味。そして、「麻」は麻婆豆腐の麻で山椒やわさびの辛さのことを言います。

実は、本場中国の麻婆豆腐は、山椒がヒリヒリするくらいに効いているのです。なので、赤唐辛子で味つけされた日本の麻婆豆腐は、本来は「辣婆豆腐」と表記せねばなりません。

日本人が山椒の効いた本場の麻婆豆腐を食べると、慣れないせいか口の中がヒリヒリします。しかし、脳を刺激すると内臓が動き出すため、翌日にはとても元気になったと感じられるのです。「麻」は脳を刺激します。ですから毎日食べていると頭がボケません。中国の食べ物は日本の食べ物に比べて匂いも実に様々です。食べる前にまず見て、触れて、匂いを嗅いで、噛んで、それから食べるのです。

視覚、触覚、嗅覚、聴覚、味覚の五感をフルに刺激するため脳もカラダも元気になるのだと考えられるのです。日本の「さしすせそ」も同様に、変化のある味覚で脳を刺激し、食欲と元気を呼び戻そうとした先人の知恵なのだと思います。

 


 

■五味の効用■

そんな五味ですが、それぞれの性質と特徴。そして、何に効くのか。それらを簡単に整理してみますと以下の通りです。

 

①酸 酸っぱい味:「気」や「血」のめぐりを良くして肝臓・胆のう・目・自律神経の働きを助けてくれます。

例)杏、レモン、柑橘系の果物、梅、トマト、しめさば

 

②苦 苦い味:心や感情などの精神活動を司る。舌・脳・心臓・血管・小腸の働きを助けてくれます。

例)セロリ・かぶ・うど・ごぼう

 

③甜 甘い味:胃や膵臓・消化器全般の働きを助けてくれます。胃腸・免疫・筋肉に良いです。

例)そら豆、さつまいも、里芋、米飴、栗

 

④辣 辛い味:全身の「気」や「水」を調節して代謝作用を高め、鼻・肺・気管支などの呼吸器・大腸の働きを助けてくれます。

例)しょうが、唐辛子、にら、にんにく、セリ

 

⑤鹹 塩辛い味:体内の水分代謝のコントロールを行います。耳・腎臓・膀胱・骨の働きを助けてくれます。

例)昆布、ひじき、のり、しょうゆ、イカ、カニ

 

これらは、中国医学の「陰陽五行」に基づいた味覚の配分になります。陰陽五行とは、この世界におけるエネルギーの変化のパターンを5つに分類し、特徴づけたものです。季節の変化にも春夏秋冬を含む「四季」と季節の変わり目である「土用」の合わせて5つのパターンを見出します。色々なことに応用できる陰陽五行ですが、また別の機会に詳しくお伝えできればと思っています。

まずは五味を意識して、調味料を選んだり、食材を選んだりして取り込むことで、体調を整えるのに活用してみましょう。調味料の性質を考えて自分で料理するのが楽しくなってきますよ。

 

 

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