遺伝子の声を聴く

食と健康

d09745895beeca59872350efc058a7c8_s

 

パンや麺は食べるけど、お米はほとんど食べないという若い人が増えています。また、中には動物性のタンパク質ばかり食べ、野菜はもうしわけ程度しか食べない、そんな偏った食事も多く見うけられます。

皆さん、若いので、一見元気そうには見えるのですが、何となく覇気がない。肌はくすんでツヤがない、よく聞くと便秘で困っていたり、疲れやすかったり、いつもイライラしていたり、本当の健康とはいえない状態。

これらはきっと原因が食事にあるのだと感じます。

 

■糖質制限は本当に良いの?■

最近は、糖質制限ダイエットや原始人食ブームで、ご飯抜きこそが健康の元と唱える方も多い。穀物を主食にした上でスウィーツやアルコールなどの糖質をさらに摂って健康を害している人なら、確かに短期的にこれらの食事法に切り替えることで改善の効果があります。しかし、長期的に続けた場合、多くの問題を孕んでいるように思います。

これらの食事法は、アメリカの医師ロバート・アトキンスが提唱した「アトキンスダイエット」が土台になっています。2003年頃、アメリカでブームとなり、7人に1人が取り組むほど社会現象にまでなりましたが、ブームの中、アトキンスは転倒により、頭を強打し死亡しました。また、ダイエットを長期で続けた人の中には、頭痛や下痢、炭水化物が少ないことから来る副作用が見られ、長期的には安全性を保証できないと報告され、急速に実行する人が減りました。

人類は穀物を栽培する技術を発見し、主食としてきたことで急速に進化発展してきた事実がありますし、私たち自身のカラダには穀物のでんぷん質を分解し、糖に変化させるための消化酵素が内蔵されています。それそのものが、人間にとって、エネルギー源としての糖が必要であることを表しています。なので、穀物を完全に否定し、不要なものと結論づけてしまうのはずいぶんと単純なモノの見方だと思えてしまうのです。もちろん、摂取する糖の質と量をよく考慮すべきなのはいうまでもありませんが。

 


 

■東洋人に合った食体系■

東洋人である私たちに必要なのは、まず「穀物」です。次に大切なのは野菜や海藻。そして、肉、魚、豆類などのタンパク質。そして、果物や乳製品がきます。穀物もできるだけ精製されていないものを食べるほうが栄養摂取においてもエコロジカルな観点からも良いです。

この順番が私たち東洋人には合っています。これが逆になるとカラダを壊したり、病気に罹りやすくなります。穀物を何から摂るかは人それぞれ、地域によっても異なると思いますが、それでも日本人なら「何はなくてもおにぎりさえあれば」という方は多いと思います。コンビニをみても、ずらり並んだおにぎりを沢山の方が求めてレジへと並びます。

これは、炭水化物である穀物を「米」から摂るという食べ方が、米を主食としてきた日本人の遺伝子の中に組み込まれているからでしょう。

その土地で先祖代々食べてきたものが、その土地に暮らす人々の遺伝子に合っていることは間違いないと思います。何千年の歴史の中で受け継がれてきた食べ物こそ私たちのカラダに合っているものだし、他の地方から入ってきたものというのは、本当は要らないものなのかも知れません。もちろん、一人ひとりの遺伝子は異なりますし、同じ先祖代々のものであっても、人により合う合わないはあります。ただ、言えることは、自分の遺伝子に合ったものを選ばなければ、病気になりやすいということです。

 

■乳糖を分解できない日本人■

例えば、乳製品。

私はもともとチーズが好きで、時々、良い原料と製法で造られたものを楽しむことはありますが、ふだんはあまり口にしません。たくさん摂った後、カラダが重くなるのを感じるからです。それは、体重が増えるという意味ではなく、カラダに負担がかかっている状態をフィーリングとして感じるからです。なので時々楽しむくらいで丁度良いのです。

朝、牛乳を飲むとお腹がゴロゴロするとか、乳製品が消化しづらいという人が日本人には案外います。これを乳糖不耐性といいます。それは中国でも同じようです。揚子江あたりの北の地方ではモンゴル系の子孫が多く、乳製品で育てられた人も多いため乳糖不耐性の人は少ないのですが、南方の漢民族や少数民族の人たちは、日本人とよく似ていて食生活にも共通点が多く乳製品が苦手という人も多いのです。

乳製品は、昔から摂っている欧米人には合っていても日本人や中国の一部の地域の人たちには合わないように思います。日本人すべてに合わないのではなく、合わない人が多いのではないかと思うのです。なぜなら、日本人の先祖は戦前、乳製品をほとんど作っておらず、今のように酪農が盛んになったのは戦後、アメリカの食料支配戦略の影響を受けたからで、もし本当に必要であったなら、昔からすでに作って食べていたのではないかと思うからです。

 

牛乳でカルシウムを摂る方も多いでしょうが、東洋人のカラダに合っているカルシウムの摂り方は、小魚や小エビ、海藻、小松菜など緑色の野菜からです。日本人の身長が伸び、体格が良くなったのは、戦後急激に普及した肉や乳製品の御陰もあると思いますが、その一方で現代日本人の骨は非常にもろくなっています。これは一説には乳製品のせいだと言われています。

成長期にゆっくりと成長すれば骨も丈夫になるのですが、過剰な乳製品の栄養により一気に成長してしまうと骨の成長がこれに追いつかないのです。

戦後、日本人の平均寿命が伸びたのも、確かに肉を食べるようになったからでしょう。しかし、同時に、大腸がんや生活習慣病などの病気が増えてきたことも見逃せません。人間の暮らしは時代とともに変化します。新たに優れた食材も紹介され日本へやってきます。それらに対応していくことも大切ですが、本来の私たちの伝統的な食生活をベースにして少しずつ取り込み、調和させていくことが必要です。

 

■医食同源を伝える■

100%良い悪いということではありません。どんな食べ物にだって、メリットとデメリットの両面があるのです。私たち日本人に代々受け継がれて来た食事が、米を主食として野菜、魚、豆類ですから、それに加えて少々の肉や乳製品をほどほどに食べるようにすれば、もっと元気で長生きできるのではないでしょうか。

本当に元気でなければ、それは本当の意味での長生きとは言えません。今、現代人の食事は混乱の時期にあります。昔、どの家でもおばあちゃんが教えてくれたような食生活を信じ、守っている家庭がある一方でファストフードやインスタントな新しく入ってきた外食に飛びついたり、家庭で料理せず、出来たものを買って間に合わせるという家庭も増えています。

特に、若い人たちの間では、溢れる情報の中で混乱しているため、新しいものはすべて良いものと勘違いしている人も多いのです。私自身は小さい頃から祖父母によって、食べ物の大切さと良い材料を選ぶことの重要性を教えられて育ちました。まだ、私のように伝統的な食文化の中で育ってきた人も大勢いると思います。遺伝子が受け継いできた食事を基本に新しい食材を取り入れながら「医食同源」の大切さを次の世代に伝えていかなければならないと感じています。

 

 

★漢方の知恵を毎日の食卓に。とっても実用性のある本。どんな食材が、何に効くのか、何と食べ合わせがよく、どんな体質改善がみこめるのか簡単に理解できます。

漢方の知恵を毎日の食卓に いつもの食材効能&レシピ帖―食材338点レシピ151点

新品価格
¥1,744から
(2015/4/27 05:33時点)

コメント

タイトルとURLをコピーしました