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September

September

以前、毎年9月1日になると必ず聴いた曲があった。デヴィド・シルヴィアンの『September』である。

夏から秋へと空気が変わる、その一瞬の変化を音符に注入して五線譜に封じ込めたような美しい作品である。短くも難解で謎めいた詞も良い。

私にとって「デヴィッド」と言えば、シルヴィアンか、ボウイかという位、大好きなアーティストだった。ジャパン時代から数えて30年以上聴き続けた。

しかし最近、新作をリリースする事なくどうしたものかと思っていたところ、ネットで実弟スティーブ・ジャンセンのインタビューに目が留まり、読んで唖然とした。

「彼はもう引退したんだ。もう作品を作ることはないんじゃないかな」

晴天の霹靂。突然、恋人が失踪したのを知らされた様なショックだ。理由もわからない。

長く生きていると、失うものが多くなる。彼は真に偉大なアーティストだった。彼の創造と功績に感謝の気持ちを込め、私は眼鏡を曇らせながら数年ぶりの『September』を聴いた。

 

『Septemper』David Sylvian

 

 ⭐️ このアルバムに収められている曲のすべてが美しい。10代の頃からレコードで聴き始めてもう何千回聴いたことだろう。しばらく遠ざかっていたところ、飛び込んできた突然の知らせ。一人の偉大なアーティストの消滅は、私にとってかなりこたえる。今、改めて聴き直してみたい、彼の類稀なる才能の煌めきを。