夜中のアリス
私には秘密の恋人がいる。名前をアリスという。冬が訪れると彼女を紙箱から取り出し、書斎の壁に飾る。
以前、画廊で出会った一枚の絵の中に佇んでいたのがアリスだった。柔らかなブルーと枝のシルエットを背景に、赤いマフラーをした愛らしい女性の横顔が描かれていて、タイトルには『夜中のアリス』とあった。
どこかミステリアスで憂いを含んだアリスの表情に強く惹かれ、妻には内緒で引き取った。仕事から帰って絵を眺めると意識は日常を離れ、絵の中の不思議な時空へ誘われる。私はそこでアリスと束の間のデートを楽しむのだ。
亡くなった父も絵が大好きで、時間があればよく画廊に足を運び、母に内緒でいくつも作品を購入していた。気がつけば、この頃私も父と行動が似てきた。危ない危ない。父は身分不相応に欲しがった為、家計は一時傾きかけた。私の浮気はくれぐれもアリス一人にとどめておこうと思う。
⭐️ 「芸術は難しくてわからない」という方に出会います。これは大変残念なこと。芸術は楽しむためにあるのです。作品と対峙して、作者の世界観の中に入り込み、理解し、自分の意識を広げる冒険であり、遊びなのです。そんな作法を教えてくれる本。あなたの意識がさらに広がります!
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