庭栗(にわぐり)
庭に一本の栗の木がある。前の家主さんが家族の成長を見守るシンボルツリーとして植えたものだ。今年も収穫の時期を迎える。
越した当時、娘は幼稚園児だった。毎年秋には庭に散らばる毬栗を見つけ、「パパ、一緒に栗拾いしよ」そう言ってせがんだものだ。
やがて娘と私が採集担当となり、妻が栗ご飯を炊いて家族皆で収穫を祝い、年中行事になった。
それがいつの頃か娘からのお呼びがかからなくなった。来春大学受験を控えた今、なおのこと娘は口数も少ない。きっと、これが成長であり、思春期というものなんだろう。
親の立場が栗の木と重なる。縄文時代に既に日本に群生していた栗は永らく人々の主食となり、暮らしを支え見守ってきた。
そうだ、私も栗の木になろう。今は子ども達の成長をただ暖かく見守る木に。まずは娘の大学受験合格。そして来年の秋には少しだけ私からこう誘ってみよう。「娘よ、パパと一緒にまた栗拾いしよう」。
⭐️ ご存知でしたか?栗の木は単に栗の実だけでなく、縄文時代から優良材として大切にされ、その丈夫さから現在でも鉄道の枕木や合掌づくりの家屋の建材として使われてきました。湿気に強く、腐りにくく、加工しやすい。三拍子揃った日本の栗の木。その腕でご飯食べればあなたにも縄文の魂が蘇ります!
価格:960円 |