素粒子は躍動する

この世界に存在する物質の最小単位って何でしょう?
モノを半分に分けて、それを半分に分けて、さらにまた半分に分けてと、繰り返していった先の、もうこれ以上は分けられないという究極の最小単位、それは一体何でしょう?
・・・それは「素粒子」です。
固体はもちろんのこと、液体だって、気体だって体と名のつくものはすべて、この素粒子という粒つぶが寄り集まってできています。
人も車も、花も野菜も、コンクリートも、プラスティックも、あの硬い岩石だって、 細かく細かく分けてゆけば、みんな同じ素粒子。いわば、粒つぶの固まり。
理論上、この世界はすべて空間に浮遊する粒の集まりで構成されていることになります。
粒と粒との間隔が狭くて密であれば「硬いもの」になるし、 間隔が広く隙間だらけであれば「柔らかなもの」になる。実際は、なにもないように見える空間だって、点在する粒つぶがしっかりとチームを組んで構成しているのです。
私も粒つぶ。あなたも粒つぶ。
なおかつ、この粒つぶは、ある時は「粒」であり、
またある時は「波」であるといいます。
つまりは、素粒子とは、ひとつの状態に留まらず、絶え間なく変化し明滅しているものなのです。
・・・・なんて、文にしてしまえば無味乾燥なこの真理も、 「アート」という魔法のフィルターを通せば、とびきり魅力的なファンタジーになってしまいます。
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高木正勝さんというアーティストがいます。
彼は、私の最も好きなアーティストのひとりです。
●高木正勝氏(1979ー )
http://www.cinra.net/interview/2013/02/15/000000.php?page=2
京都在住の映像作家であり、自ら作曲も手がけ、私が数十年来のファンであるDavid Sylvianの世界ツアーにミュージシャンとして参加した経験を持つ。 そんな彼の映像作品を見たのは数年前、インターネットのあるサイトでした。
その時、私は『Girls』という名の映像作品に完全に眼が釘付けになってしまったのです。
「これは、まるで素粒子物理学の世界じゃないか!?」
画面の中では、素粒子がダンスしていました。モノを素粒子の集まりとして世界を眺めたなら、きっとこんな風に見えるのだと思います。
きらめく光と舞い上がる色彩の粒の中、愛らしい少女の生命がイキイキと描写されています。 コンピューターグラフィックという硬質で無機的な表現手段の中にありながら、とても温かな体温が感じられるのはなぜなのでしょう。
けれど、それらの映像には、この世とあの世を行き来するような奇妙な浮遊感がたえずつきまといます。ある種の切なさと一度見たら忘れられない強いインパクトがありました。
私はその不思議な素粒子のファンタジーにすっかり魅せられてしまいました。 その後、彼の作品の多くをyoutubeで検索して鑑賞してみましたが、どれも素晴らしい。
日本という小さなこの島国で花開いた彼の才能は今、海を越え世界的な評価を得ています。
2009年のNewsweekで、「世界が尊敬する日本人100人」の1人に選ばれた彼は、その後、2012年公開の映画「おおかみこどもの雨と雪」の音楽も担当しました。この時の音楽もとても良かった。
アーティストとは、人類を代表して宇宙からの情報をキャッチし、作品によってその真理を表現する巫女であると思う。
彼の作品に出会って、自分がイメージしていた素粒子が踊るこの世の実相をよりクリアに感じられるようになりました。
さて、これから彼はさらにどんな美しい映像世界を創造してくれるのでしょう。大いに期待したいと思います。 高木正勝、彼の素粒子のダンスは今、始まったばかりです。
★名曲『Girls』を含む高木正勝旬玉の作品集。長く聴き続けても飽きることがありません!
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