無意識を操る男


 

Milton

 

人の「無意識」というものは、強大な力を有しています。

私たちは、ふだん、この無意識を意識することはありません。

しかし、この無意識こそが、私たちを条件づけ、行動へと駆り立てるのです。

 

無意識の世界は、よく氷山にたとえられることがあります。

私たちが海面上に目にすることができるのは、全体のわずか1/7。

その海面下には、全体の実に6/7の巨大な氷の固まりが沈んでいるのです。

見えない部分こそが、鍵を握っているのです。

 

もし、人のこの無意識の領域を、

意図してコントロールすることができたなら、

私たちはどれほどの可能性をこの世界に表現することができるでしょう。

かつて、この無意識の領域に挑戦した偉大な人物がいました。

 

 

■人格が変わった若者■

例えばこんな話があります。

 

街に札付きのワルだった一人の若者がいました。

反抗的で暴力的、素行がとても悪く、まわりの大人が手を焼くワルでした。

 

まわりがどんな方法を使っても立ち直らせることができず、

若者は最終的にある男の所へ連れて行かれました。

男は目が悪く、紫色しか見えないために、そのオフィスの壁も天井も全て紫色。

 

そして、足が不自由だったために車椅子で出迎えた男は、

その若者を前にしても、全く動じる気配がありません。

 

「君はここへ無理やり連れてこられたんだろう?」そう男が訊くと、

「ああ、そうだ」若者が答えます。

 

と、その時、

「もういいから、帰ってくれ!」

男は突然、意外な言葉を叫びました。

 

若者が帰ろうと、くるっと男に背を向けると、男は再び若者に訊きます。

「もし君が、まわりの皆が期待する人間になったなら、君はうれしいか?」 

「ああ、うれしいね」 

 

男の質問にそう答えた若者は、2週間後、本当にそうなりました。

まわりから期待される好青年へと変わってしまったのです。

 

本人はもとより、まわりの人間もこれが催眠治療の効果とは思いませんでした。

普通に見れば、催眠に誘導した形跡もなく、暗示がなされたわけでもない。

2言3言のやりとりだけにも思えるこの短い会話の中で、

実はこの男、かなり高度な催眠治療を行ったのです。

 

無理やり連れてこられた若者に対し、

「無理やり連れてこられたんだろう」と共感をしめした後、

「帰ってくれ!」と突然、突き放し、軽く虚をついたところで催眠へと誘導し、

「期待される人間になったらどうなるか」という問いかけをすることで

暗示の技術を使い、人知れず望む結果へと若者を導いたのです。

 

この男の名はミルトン・エリクソン

精神科医にして心理療法家であり、

アメリカの生んだ20世紀最大の催眠療法家なのです。

 

催眠術というと、テレビでよく見る見世物的なイメージがありますが、

普段の私たちの暮らしというものは、

すでに多くの催眠的な要素が散りばめられています。

 

例えば、必要もないのに、コマーシャルを見て新車が欲しくなったり、

フィクションである映画を観て、感情移入して泣いてしまったり・・・

これらも立派に催眠の一種といえます。

 

ただ、この催眠を心理学、医学に応用し大勢の病める人を助け、

幸福に導いたのは、おそらくこのエリクソンが最初。

 

彼の技法は学べるところが多く、

私は家庭生活でも、内緒で家族に用いることがあるのですが、結構効きます。

彼の臨床における考え方は、深い人間愛に基づいており、

私の仕事である治療や、人間理解にとても大きな示唆をもたらしてくれます。

 

実は、ミルトン・エリクソンの妻、ベティ・エリクソンの開発した方法で、

自己催眠への導入法というのがあるので

興味のある方は手始めに試されてはいかがでしょう。

 

■自己催眠の導入法■

床に仰向けになり、リラックスする。

①目に見えるものを3つ言葉にして意識する。

例)天井が見えています。ランプが見えています。天井のしみが見えています。など。

 

②耳に聞こえるものを3つ言葉にして意識する。

例)遠くで鳥の声が聞こえています。時計の音が聞こえています。ファンの音が聞こえています。など。

 

③体に感じている感覚を3つ言葉にして意識する。

例)床の固さが伝わってきます。ズポンのベルトがきついのを感じます。腕時計の重さを感じます。など。

 

④目に見えるもの2つ、耳に聞こえるもの2つ、体に感じるもの2つを言葉にして意識化する。

 

⑤目に見えるもの1つ、耳に聞こえるもの1つ、体に感じるもの1つを言葉にして意識化する。

後半にすすむに従い、まぶたが重く気持ちよくなり催眠状態に入ります。

 

この自己催眠で感覚をつかむと他人にもかけやすくなります。私自身は、旅先で枕が変わって眠れなくなった時などにこの術を使うのですが、すぐにリラックスしてきて、最後まで数え終わるまでに意識を失い、眠ってしまうことがほとんどです。

気持ちが高ぶったり、緊張してる時、試してみて下さい。きっと軽いトランスが味わえて、リラックスできますよ!

ミルトン・エリクソンについては、このブログでも時々取り上げてみたいと思っています。

 

 

 

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noahnoah

治療家。マクロビオティック指導家。導引研究家。子供の頃から「生きる」ことの不思議に興味を持つ。20代で放浪の旅に出たインドで九死に一生を得る体験をする。以来、宇宙と生命の繋がりについて考えるようになる。現在、モノを書くことを通じて宇宙生命の神秘に近づこうと奮闘中!

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